読書感想文「天才の思考 高畑勲と宮崎駿」鈴木 敏夫 (著)

 鈴木敏夫とは,傍らにいる人である。手を動かすことの天才・宮崎駿。哲学することの天才・高畑勲。彼らの隣にて話を聞き,彼らの環境を整え,ときに彼らを唆し,モチベーションを保つ。面白いことに吸い寄せられるように始めたナウシカ。そこからズブズブと,宮さんと高畑さんの作品を形にしてきたのが鈴木だ。
 その場の時空を歪めかねない重力を持つ両天才に不可欠な存在となり,プロデューサーという立場が定席になってしまう。そんな若き鈴木敏夫クン時代からの青春ストーリーと言ってもいいだろうし,鈴木視点でのジブリ史である。
 映画の印象やインパクトと興行成績の違いには驚かされる(初期の作品の低さよ)し,宮崎吾郎や米林宏昌への高い評価に関心を持たされる。
 それにしてもジッとしていられない,手を動かしちゃうのが宮崎駿である。そうした過剰さを御し,会社としての形に押し込みスタジオを経営してきた鈴木敏夫その人そのものについては,また別の著作が必要だろう。なぜ,天才をマネージメントする立場では無く,作品をプロデュースする側となれたのか,その疑問は残っている。


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