読書感想文「お寺の掲示板」江田智昭 (著)

 ときにドキッと人を刺すような言葉を掲げるお寺のアレのことだ。「お寺の掲示板」を全国から集め連載された企画モノではあるが,さすが選り抜きである。一つ一つが面白い。手練れの住職の決め台詞のような一言もあれば,実直な言葉,有名人のセリフの引用もある。
 掲示板を使って,万人に晒す言葉だ。その通りすがりの一瞬でハートを掴まなくてはならないから,1対1の対面でモノを言うのとは違う。瞬間に引っかけアレっと思わせた後,口の中で2,3度,繰り返させて,ジワジワと余韻を味わせる。そんな染みる言葉たちが並ぶ。
 掲示板が伝えるのは,「自分自身の愚かしさを含む,こんな程度の己を自覚せよ」であり,「いまを,今日を,全力で生きろ」である。それは,お釈迦様や阿弥陀様が,張り扇で釈台や机の上をバンバンと叩き,「目を覚ませ!」,「何しとんじゃ」と壁と文字を使って,シャウトしているようだ。
 お寺の掲示板,侮るなかれ。


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