読書感想文「サピエンス全史(上),(下)」ユヴァル・ノア・ハラリ (著)

 世界的ベストセラーである。言うなれば,世界のみんながこれを読んでいる,ということだ。これまでも歴史の大著なら,いくつもあったわけだが,この本を多くの人が手に取ったのはなぜか。
 征服者や為政者といった誰が統治したかが中心ではなく,人間そのものが,どう振る舞い,結果,どんな社会をつくることになったかに焦点を当てているからだ。「人類は狩猟採集社会から農耕社会へ移行しました」。教科書はこうだ。だが,ハラリはどう狩猟採集しどんな社会を築いていたのか,何の因果で,うっかり農耕を始めてしまったのか。そして,それがどんな,もう戻れない社会にしてしまったのか。やがて,貨幣,帝国,宗教を生み出し,複雑化,混沌とし,止めの産業革命,そしてIT革命である。
 コミュニティ,家族といった紐帯が一層脆くなる中で,そもそも何でこんなにもハイテクでバラバラな俺たちなんだ!いったいいつからこんなになっちゃってるんだよ?!に,ハラリが答えてしまったが故に,売れに売れたのだ。
 世界は答えを手にしている。


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