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Doors

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短編小説「Doors」
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#扉

Doors 最終章 〜 Doors

Doors 最終章 〜 Doors

 僕は細長い廊下に立っていた.先が見えないくらいとてもとても長い廊下に.目の前には沢山の扉が並んでいる.すると,その扉が端から順に開いていき,全ての扉が開いたら扉の中から光が流れ出した.眩い光に一瞬目が眩んで目を背けた.
 光が止むとそこには扉が一つだけあった.ドアは開いており,中からキラキラと光が漏れ出ていた.ゆっくりとその中に入ると,中にはまた別の扉が一つ.こちらには鍵が掛かっており厳重に閉ざ

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Doors 第25章 〜 未来の過去

Doors 第25章 〜 未来の過去

 2021年1月21日夜.僕は帰ってきた.未来の僕と現実の僕が一つに重なった.ただ,どこか少しだけ違和感が残っている."荷物"は最小限だったが充分だ.その夢だけで.
 時間旅行の記憶は線路の継ぎ目くらいの一瞬のことだった.ないに等しいと言えるくらい.しかし,身体に直接刻み込まれた記憶が,その旅の壮絶さを物語っていた.二度と経験したくないと思う過酷な旅の.

 時間旅行の際,僕は一人で愛のない世界に

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Doors 第24章 〜 未来

Doors 第24章 〜 未来

  ありがとう

 そう言うと僕は原稿を置き去りにして夢へと旅立った.いつか誰かがこの原稿を見つけてくれると信じて.そして明日へと戻った.

 人はいつだって正しい選択をする.もしも間違った扉を開けばセーブポイントからやり直しになるだけ.途中で間違いかなと思っても,その先には行くべき道が必ず待っている.不甲斐ない人生の幕切れは,冷酷かもしれないが,その人にとってはそれが正しくもあったということ.理

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