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スカーファー #51_110-111

 頭部を覆ったスカーフは、次第に大きく広がった。ケンの身体全体を包み込むと、繭玉に変化した。水滴をまき散らし、繭玉は宙に勢いよく浮かびあがった。新しい繭玉は、補給船の航跡を追い始めた。

十二 ファイファー
 ファイファーと一体化した大蛾は、海岸線に沿って南下していった。目的地は、大西洋側にある南米の国。大戦末期、ナチの残党が多く逃れたという国だ。大蛾の懐の中。毒が回ったかのように、ファイファーは酩酊状態に陥っていた。
 嫌な出来事が、フラッシュバックのように蘇った。あの村を焼き討ちするよう指示したあと、埋葬所に寄り遺物を回収した。ファイファーは、ある場所へトラックを走らせた。帝国の推進していた、宗教総本山へ。
 ファイファーがケンの村に目を付けたのは、総本山の司祭がもたらした情報だった。

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