見出し画像

電脳病毒 #34_224

 処理作業に携わっていた労働者達。ばたばたと倒れ始める。手足が痙攣し、立つこともままならない。中央から派遣された医師団が検査にあたる。結果、患者の髪の毛から大量の鉛を抽出。口から入った有毒物質。塵埃に含まれる亜鉛など雨により溶けだし、人の手を経て口中へ。
 この事件が公にされるのは、数年先だ。政府は事件を公表することなく、塵埃の受け入れは止まらない。廃棄場所に、汚染物質を囲い込む遮蔽シートの設備はない。地下水に浸透し、汚染物質は農作物にも被害を及ぼしている。それでも、塵埃の処理作業は続く。やがて、労改の囚人達に処理作業の大半は委ねられる。疲弊した地元住民の代わりに。
 徐の家族はじめ、地元住民は相次ぎ倒れていく。徐の父から始まり、叔父や年上の従兄弟達の死が続く。残された母や叔母達の嘆きを、子供だった徐は間近に感じた。徐は一人っ子対策の申し子。兄弟はいない。


この記事が参加している募集