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砂絵 #51_67

 その場所を聞き老婆に礼を言うと、椎衣は自転車で走り出す。
 診療所の前で自転車を止めると、庭で遊ぶ恵が椎衣を見る。
「かあちゃん!」恵は叫びながら椎衣に抱きつく。椎衣は恵を抱き上げる。 
「かあちゃん、どこにいってたの?恵、寂しかったよ。恵、ずっと待ってたよ。かあちゃんが教えてくれた歌唄って」恵の顔には、涙が流れた跡が乾き白くなっている。椎衣は黙って頷く。 
「朱雨さん・・・」扉が開き白髪の男が庭に出てくる。
 椎衣は恵を抱きながらに近づく。
「猿海です」
「恵がお世話になって。わたし、朱雨の姉の椎衣といいます」椎衣は頭を下げる。
「あなたの姿が見えた時、朱雨さんがこの子を迎えに来たんじゃないかと錯覚した」猿海は椎衣の顔をじっと見つめる。