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良いnote

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個人的に、とても個人的に、いいな、と思ったnoteを集めるマガジン。
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#エッセイ

長い昼寝のあとで

気温が25度を超えた11月の夏日、とろりとした眠気に襲われた。 定時で退勤し、猫のようにシーツに潜り込む。頰にあたるタオルケットの冷たさと、頬からゆっくりマットレスに沈み込んでいくような感覚。なんだろうこの懐かしさ、と思いながら眠りに落ちた。 深夜、目を覚ますと額にはじんわり汗をかいていて、喉がカラカラだった。氷を入れた水をごくごく飲んでいたら、さっき感じた懐かしさの正体は、 幼い頃の夏の記憶だと気付いた。 小学生の頃、夏になるとよく、ひとりで逗子の海を泳いでいた。泳ぐ

自由を愛しているからね

8月前半日記 自由と責任と孤独 大学時代によく遊んでいた友達と、久しぶりに2人で会った。大学卒業後、仲間内ではよく顔を合わせていたけれど、2人は本当に久々だった。昔からとにかく話のテンポが早くて楽しかったんだけど、今も相変わらずくだらない話しから真面目な話まで、ずーっと話していられた。住む場所も境遇も今は全く違うけど、いつもSNSでも気にかけてくれて、優しくてとても聡明なところが本当に大好き。 「〇〇(私)は自由だし、その自由を愛しているから、もうこれからのことも何にも

個人でエッセイ集をつくる方法

「個人でエッセイ集をつくるのって、めちゃくちゃ楽しい」 文章を書くのが好きで、それを誰かに受け取ってもらえることが嬉しくて。 このnoteに毎週エッセイを更新しているのですが、やっぱり「紙の本」で一冊にまとめること、そしてそれを誰かの日々の中に迎えてもらって、お部屋の本棚に並べてもらえることは、Webに更新するのとはまた違った喜びを感じます。 「個人でエッセイ集をつくってみたい」と思っている方はきっといると思うし、この楽しさをもっと多くの人に味わってほしい。 そんな想

本作りは壮絶。

今は書籍デザインの仕事を二冊ほど抱えていて、うれしい反面、締め切りに追われながら作家さんと編集さんと励まし合いながらひぃひぃ言っている。 毎日、明け方の4時頃にここまで書きました…いったん仮眠します……などとメールがきていて、寝てーーー!!!となりながら、でもやはり文章が届かないことには編集さん、校閲さんのチェック、文章に合わせたイラストの制作、そしてわたしの組版や修正が追いつかないし、さらにはスケジュールに焦る印刷会社さん、その間にも本屋をまわっている営業さん、本屋で棚を

未来の人に残す森を買ったはなし

先日、夫婦でこの森を買った。 広さは74,000㎡、東京ドーム約1.6個分。 電気もガスも水道もない。 この森をこれからどうするのか、未来の人に残すとはどういうことなのか、 それを周囲の人に説明する気はほとんどなかった。 ビジョンを語ったり、目標を掲げてアピールしたり、そういうことをするより前に「思ったら淡々とやる」が性に合うからだ。 自分の内側の声を拾い上げるのも、誰かと語り合っていると聞き取れなくなり立ち止まってしまうから、一人で黙々と考え結論を出す方が良い。 それだから

私は私にしか成れない

読んでいるのに返せない未読のLINE、先延ばしにしてしまう悪い癖、ワンコールで出ることに抵抗してしまう着信、寝ても寝ても怠い身体。たったこれだけ、ということができない自分に嫌気がさす。 就活の自己分析サイト。診断結果はいつも「芸術家タイプ」。だからどうしろというのだ。芸術家タイプは、芸術家ではない。芸術の才など持ち合わせていない。芸術家タイプなだけじゃご飯は食べられない。私に何ができるというんだろう。 毎日欠かすことなく鏡を見て思ってしまう。 私って一体なんなんだろうか、

手をのばす、届かなくても。

「半分くらいの力で生きてきましたね。マイペースにのんびりと。いつか夢中になれることを見つけたら、その時は全力で取り組みたまえ。」 小学校を卒業するとき、クラス全員がお互いに書いた寄せ書きの中央に担任の先生が書いてくれた言葉がずっと心に残っている。いつも元気いっぱいで肝っ玉母さんみたいな面倒見のいい先生だった。 当時はこの言葉の意味をほとんど理解していなかったが、年齢を重ねるほどに心に響いて自分の中で大きくなっている。 一年を振り返る時にこの言葉に沿って行動できていたかを思

2022年 #エッセイ noteまとめ100作

今年もたくさん読みました。 + 年末恒例、noteさんから今年を彩る30選が出ましたね! 昨年にはなかった小説・マンガのカテゴリも増えてて、(えへへ、選んでもらったうれし)創作の街〜〜〜!どんどん幅広くなってくれよ〜〜〜!!とうれしくなりました。エッセイも4作品。素敵な選出ですよね。とはいえ、、 えっ、あれは?これも良かった!あれあったよね!!!ねぇ、なんでこれは??!!おいおいちょ待てよ〜〜〜!!!?! はい。わかります。みなのもの、わかるぞ。ちょっと落ち着こう。

#内側を言葉にしていくための文章講座 | 第1回

まずは話の道筋・結論を考えて、文章全体の骨組みを作ってから、そこに肉付けしていく……。 というのが、一般的な文章の書き方かもしれません。そうすると文章は全体的にしっかりまとまってくれるし、効率も良い。けれどもそうしたやり方だと、自分の文章が自分の想像の範囲内で小さくお利口に収まってしまうやないか、とも思ってます。 「いや、自分の文章なのだから、自分の想像の範囲内のことを書くんじゃないか?」と思われるかもしれないけれど、考えを文字にしていくという行為は、普段は外に出さない内

100万円が貯まったら、引っ越す

「学生のうちにやっておくべきことは、旅に出ること。社会人になるとそんなことできなくなっちゃうからね」 社会人になったサークルの先輩がそんなことを居酒屋で話していた。周りのみんなが「やっぱそうなんすかぁ」とありがたそうに話を聞いているのを見て、私も一生懸命頷いたような気がする。 27歳。私がわかったのは、そんなのは嘘だということだ。 社会人5年目になった私の目の前に広がるのは、茜色に染まった宍道湖。学生の頃、アジアを中心に安旅を楽しんだことこそあったものの、国内旅行は片手

なんてことのない作業が

朝6時20分に目覚ましが鳴る。眠い身体に鞭を打ち起き上がり、ヨーグルトを食べてスーツに着替え、最寄駅を7時前に出発するJR中央線に乗る。満員電車にぎゅうぎゅう詰めにされながら約40分、ひたすら目を瞑って過ごし、新宿駅に着いたら改札南口に出る。 会社は新宿新都心と呼ばれるエリアにそびえたつ高層ビルのひとつに入っていて、新宿駅地下の西口から伸びる地下道につながった場所にある。その地下道を通った方が早く会社に着くのだけど、なんとなくその道を歩くのが気が進まずに、いつも南口、つまり

人生変えたいなんて

2022年2月、富良野。 氷点下の風を受けながら私は、約10年前にカカオトークで届いた「一緒に住んでも人生変わらへん気がするから」という一文を急に思い出してた。 ところで「人生変えたい」とか言う人は、人生を「どう」変えたいか具体的に考えてない気がする。もしそのイメージがあるなら(たとえば、どんな仕事して/どこに住んで/どんな媒体に載るとか?)それに向けて「行動」とかを変えれば済む話で「人生」なんて派手なワード振りかざす必要ない。童話『ウサギとカメ』において最初に走りだして途

死ぬまでに読みたい本

昼に食べたタイの麺料理 ( 名前なんだっけ ) がおいしすぎて、できるならば今日も明日も食べたい。数年前からタイやベトナムの料理に夢中なわたしは、はやくお店でビールを飲みながら夜に食べたい、もしくは本場に食べに行きたい!と、そわそわ待っている。いつだって、できるだけおいしく過ごすことは私の中で優先度が高い。 昼ごはんを食べて、本屋へ寄って帰るというのが土曜日の恒例となっていて、買う目的のものがなくても、本屋の棚を見るとそれはもう毎回うきうきしてしまい、結果的には行ったら絶対

始まりはいつも、憂鬱な月曜日だった

憂鬱から始まった月曜日、淡い期待を抱いた火曜日、期待は幻想だった水曜日、振り出しに戻った木曜日、何とか乗り切れた金曜日、可もなく不可もない一週間、平均点をキープする一年間、まんざらでもない人生。 いつだって、始まりは憂鬱な月曜日だった。 週末の余韻から抜け出せなかった学生時代の月曜日、定例の会議が怖かった社会人時代の月曜日、仕事も何もせず未来が見えなかった時の月曜日。 これまでの人生、月曜日の思い出はほとんど憂鬱とともにある。 「朝目覚めたら体調不良になってないかな」