短編小説 「コインランドリーで朝食を」
冬休みの一日目。リナは早起きをしてさっと身支度をすませると、たまっていた洗濯物をバッグにつめてアパートを出た。
たっぷりのバターで焼くフレンチトーストをあきらめたのは正解だった、と淡いグレーの空の下を急ぎながらリナは思った。通りをすこしはずれたアパートはただでさえ日当たりがよくないし、午後はつめたい雨の見込みとニュースが知らせていた。
駅へ続くなだらかな坂道を下っていくと、ひときわあざやかな赤い花が入口にこぼれ咲く古びたコインランドリーがあった。こんな時間でも先客がいる。