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リモートワーカーとしての処世術

数日前のことだ。昨今の流れを受けて、先週からリモートワークを始めた会社のメンバーが「リモートワークしていると寂くなる」という趣旨のポストをslackに流していた。

そうそう、リモートワークって寂しいのよ!ついにわかってくれたか!と、フルリモートワーカーになって半年の私は、仲間ができたような気持ちになった。同時に、いまリモートワークをし始めた人たちは、しばらくすると私がこの半年経験したのと同じような葛藤を抱く可能性があるんだなぁ、と気づいた。

私のリモートワーク歴は、ITという業種と鎌倉に住むママという環境が手伝ってわりと長い。次男の出産時の前後は独立していたため産休育休はなくリモートで仕事を継続させてもらったり、鎌倉は都内から電車で1時間かかるゆえ子どもたちが小さかったときはオンラインミーティングで乗りきったりしてきたからだ。そして昨年夏にポートランドに移住して、リモート経営者となり、完全なリモートワーカーになった。

リモートワークに悩んだこの半年でもあり、格闘した半年でもあった。

そしてこの1週間、国内メンバーがリモートワークとなった。それによってメンバー全員リモートワークというのと、主とるオフィスがあっての少数派リモートワークではまた環境が大きく異なることにも気づいた。母船があるよりも、全員小船に乗っている方が働く側にとっては正直やりやすい(マネジメント側から見るとまた話は別だ)。

話を本筋に戻すと、母船と小舟の関係だったこの半年で得たリモートワークを楽しむため、上手に運ぶために私が心がけてきた事をまとめてみようと思った。「処世術」なんてたいそうなタイトルを付けてはみたが、私も現在進行形の身。これからリモートワークを続けていく中でさらなる気づきや変更も出てくるとは思うが、いったん2020年3月頭の頭の断片を切り取る。リモートワーカーとなったばかりの、どこかの誰と、未来の彼らにとってのヒントとなりますように。

コミュニケーションは先陣をきること

リモートワークをしばらく続けていると、仲間とのコミュニケーションに不協和音を感じ始めることがある。最初はメロディの中の、1音がちょっと気持ち悪いと思うぐらい。それが徐々にフレーズ全体へと広がっていく。

2、3音おかしくなった時は、リモートワーカー側から「ちょっと話しましょう」と腹を割って話す機会を設けることが大事だ。母船は賑やかだ。人もたくさんいる。なかなかひとりとの些細な不協和音には気づかないと思うぐらいの方がいい。不協和音を感じた時だけではない。困った時、関係性を変えたい時、提案がある時、すべてにおいてコミュニケーションは自分から始めたい。そう思っている。リモートの場合、相手のことがわからない気持ち、不安や不満を高める速度は、時間と共に加速度的に増していくものだから。

定期的に(空気を読まないフリをして)爆弾をslackに投下する

正直リモートワークに移行すると、いくらslackやオンライン会議システムが充実しているといっても、圧倒的に情報量が不足する。5割、いやもっと減るかもしれない(全員リモートワークの場合には全体も減るからそんなに減った気がしないかもしれない)。わからないものはわからない。そして今のオフィスの空気感なんてまったくわからない。

それを気にしているとslackなどのチャットでは正直何も発言できないし、伝えられなくなるのだ。DM(ダイレクトメッセージ)ならまだ可能だけど、全員パブリックなチャットとか恐怖すら覚えるとまでは言わないが、どんどん発言のハードルが上がる。今思い返すと、私もそういう時期があった。その時期はパブリックチャネルに書けなくてDMでお願いすることが増えたなぁ。

私は、これはトレーニングだ!と思って、定期的に空気を読まないフリをして、自分の言いたいことを言う、伝えたいことをしっかりと伝えようと決めた。しかも私の場合は時差があるからまたタチが悪いのだけど。そこで意見して欲しくないこともあれば、実は議論がオフィスでは終わっていて場違いだったりタイミングが悪かったりすることも往々にしてあると思う。

どうやら母船のオフィスの方では「松原砲」と呼ばれているらしい。空気を読まないフリなんてしなくても、空気が読めていないのだと思う(笑)。でも、空気を読んで発言しなくなったら、いる意味がなくなってしまうから、リモートワーカーの皆さんは、どんどん発言していこう!

自分の仕事への期待値を調整する

これは最初の半年間、私が失敗したことだ。移住前にこちらの生活や時差がどういう影響を与えるかわからなかったから、仲間たちとしっかりと私がやること、出す成果について決めて来れなかった。仲間が私に期待すること。私ができること/やること。そこをぴったり合わせて、言語化していないと、見えない分、お互いが不安になる。

そしてこれだけは、顔をつき合わせて、とことん話し合って決めてからリモートワークを始めた方がいいと思っている。そして定期的に見直すことが必要だ。もし今上司や仲間との間で、自分の仕事に対してのフィードバックが納得いかない事が続いていたり、相手からの不満、フラストレーションを感じていたら、ここを見直す事をお勧めしたい。

意図がわからないチャットでの問いには、複数パターンを回答しておく

これは時差のあるリモートワークならではの問題かもしれない。ちょっと具体的な話になる。

「これに意見ください!チェックお願いします!」というようなチャットが届いていても、少し背景や意図を聞かないとアドバイスも回答も難しい、というケースがよくある。オフィスにいたら、「ちょっといい?この質問の意図や背景をもう少し説明してほしい」と詳細を聞くであろう状況だ。

そのチャット上に相手がオンラインでいなければ聞きようがない。が、チャット上で質問に質問を返していては、1往復分、業務のスピードが落ちる。そういう場合には、とりあえずいくつかのパターンを想定して全部のケースの回答をするようにしている。

〇〇とあるけど、この意図は〇〇という認識であっていますか?
もし〇〇である場合には〜〜。 
はたまた△△である場合も考えられるのだけど、その場合には〜〜。

という風に相手の意図に合わせて、相手が私からの回答のどれを採用するべきか判断できるように並べて2〜4パターンぐらいを想定して答える。これを繰り返すリモートワーカーは、さまざまな角度や立場を想像して回答するので、想像力、シミュレーション力は確実に上がると思われる(時間が倍かかるのは仕方ないが、それもスピードが上がっていく)。

寂しさは人が集まる場所やポッドキャストで紛らわす

冒頭にあげた「寂しい」事案。これは本来最初にあげる項目だと思うのだが、昨今の状況を見聞きしていると実行できないだろうと思うので最後に補足的に付け加えることにした。

リモートワークは数日から1週間ぐらいは、誰にも話しかけられる作業に没頭できるし、新鮮さもあり快適なのだ。が、2週間、3週間、1ヶ月とひとりリモートを続けると、徐々に寂しさは増してくる。もちろん話好きか、ネットで生きていられるか、など各自の気質により差異はあるだろうが、私は寂しくなるタイプだった。時差があるから誰もオンラインじゃないしね。

私がとった策は、カフェで仕事をすること(今は人が集まる場所に行けないかもしれないけど・・・)。だいたい同じ時間に同じ場所で。そのうちカフェのスタッフの皆さんがまるで同僚みたいに思えてくる。カフェでよく会うリモートワーカー(私の場合はアジア系のおそらくWebの仕事している女性がいる)はもう仲間だ。もうひとりじゃない。

人の話す声がすること。喧騒があること。これは人にとって精神衛生上、とても大事なのではないか、と思う。たとえ自分に向かう話声でなくても、他の人の会話や存在によって確実に影響を受けている。

もし人が恋しくなる時期が来たら(なおかつ、今は空いている)カフェがあればそこで。今のように叶わない場合には、おそらくポッドキャストが有効だ。1日中同僚とZoomを繋ぎ続けておきたくなったら誘えばいい。

最後に。リモートワーカーとしてのマイ・ルール。

何度も繰り返しになるが、リモートワークをしている人が得る情報量は、その相手が想像しているより圧倒的に少ない。5割あればいい方なのではないかと思う。空気感、その日の心持ち、顔つきなど言葉としてオンラインに乗って来ない要素に付随して得ている情報は、日常においてそれほどまでに多いという事だ。仮に5割減だとしよう。だとしたら互いに5割増ぐらいで情報過多、要らない情報多すぎ、ぐらいのテキストを送るぐらいでちょうどいいのではないかとすら思う。

しつこいぐらい、長ったらしいと思われるぐらい、伝えたいことは何度も書くようにしている。顔を見ると、はっ!と思い出すこともあるがリモートだとそれがないから、相手も言われたことを忘れる可能性も高くなる。ゆえに反応が乏しいと何度も書く(文章の力量がない、書き方に癖もあるから、私とコミュニケーションしている皆さん、しつこくてごめんなさい。ここで謝っておく)。

そして情報収集の方法の工夫は継続しながらも、判断と意見を言うのに十分な情報をリアルと同じようにたっぷりと得続けるのはなかなか難しい(どれだけ共有できるかは双方のリモートワーク力の掛け合わせで決まる)。これはリモートをし続ける限りには立ち向かわないといけない壁だ。私は、わからなくても何かを「言おう」と決めた。

その時に何を基準とするか。それは自分の価値観だ。わからない部分は想像力で補いつつも、わからない余白があるのをいいことに、その余白に対して「自分らしい」「自分の価値観に根ざした」アイデアや提案を必ず添えようと決めた(それを出す仲間もいないから、もちろんひとりブレストだ!笑)。

以上が、私が半年間、(時差あり)フルリモートワーカーを続けて思っている事。引き続き、リモートワーカーとして頑張ります!

追伸:リモート経営については、実践している皆さんと一度ディスカッションしたいと思ってる。まだ言葉になっていないが、今回書いたこととはまた別の葛藤が、この半年間あったので。




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