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東南アジアの風景 (200) タイ|バンコク前国王ラマ9世の火葬場は珠玉の傑作

2016年10月に崩御された国王ラマ9世。類稀な名君としてタイ国民から慕われていた王様がお亡くなりになったと聞いて、ついにその時が来てしまったかと暗澹たる気分になったことを覚えています。
特にタイに進出している外国企業にとってはラマ9世亡き後のことは不安材料でした。
心の支えを失ったタイはこれからどうなるのか。何が起こるのか。

一年間の服喪の間はすべての国民と在住外国人は外出時は黒い服を着用。デパートや市場の服売り場はすべてモノトーンとなりました。

あらゆる場所に喪章が。ここは電車駅の階段

そして、2017年10月に国葬。TVで観ていた私も思わず涙する厳粛なものででした。

国王の火葬場は王宮広場に約一年かけて建造されたもです。
これが国葬の後に期間限定で一般公開されることになりました。
当然のことながらタイ全土から見学者が押し寄せる。
入場までに4~5時間かかると連日の報道を見ていて自分が見に行けるチャンスはないのかな、と思っていました。
すると、11月までだった公開が12月まで延長、混雑もだいぶ緩和されたというニュースが。
ダメもとでいいから行ってみよう。と出かけたのでした。

夜が綺麗、とのことなので日が落ちる前の夕刻に到着。
王宮の周辺は車両通行止め。官庁街の交通量が多い道に車がいないのは異様な光景です。

幸運にも15分程の待ち時間で入場できました。パスポートを見せて名前と電話番号を書くだけ。外国人でも隔てなく同じように扱っていただきました。
入場するといきなり現れる特設火葬場。

ローカル新聞のweb版より

葬儀の際には真ん中の部分に棺が置かれ、荼毘に付されたのでした。

下の部分には水が流れていて様々な動物のモニュメント。

隣には展示場があり、この火葬場の構造や制作過程を知ることができます。

陸軍士官学校の人たちが団体で見学にきていました

見れば見るほどこれをわずか1年で完成させたことに驚きしかない。
タイを代表する芸術家、建築家、職人さん達による不眠不休の努力の結晶です。

展示室を出ると日が暮れていました。ライトアップが始まっています。

なんという美しさ。

偶然にも満月。しばらく見とれていました。

スタッフの方たちは正装で。暑い中ご苦労様です。

国宝級の芸術作品と思うのですが、残念ながら同年12月末に取り壊されました。葬儀場は縁起が悪いので残してはいけないそうです。
なんともったいない、と嘆きつつ何度も振り返りながら退場しました。

あれから5年。タイは大丈夫でした。
今、思い出しても貴重な体験であったと懐かしくて記事に残そうと考えた次第です。
(2017年撮影)
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