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心理的安全性のために取り除くべきは、「変化することに対する不安」であり、「組織内での“生存”が危ぶまれるという危機感」は維持した方がよい。

カヤック人事部の柴田です。社外人事部の神谷さんがやっている勉強会に参加しました。今回のテーマは「心理的安全性」。自分なりに理解するために、「自分にとって一番わかりやすいように」心理的安全性についてまとめてみました。

①心理的安全性は「目的」ではなく「手段」。だから、「心理的安全性」を目指すのはなんか違う。その先に何があるのか?それはチームの成果だ。

Edmondsonさん曰く、

「チーム構造」→「心理的安全性」→「チーム学習」→「チームの成果」
元ネタ→Psychological safety and learning behavior in work teams. 

という感じだ。「心理的安全性」はチームで成果を出すための媒介変数であり、目的ではない。「各個人のレベルが高い場合、上で言われている心理的安全性が存在しないのに、チームの成果がでているというケースもある」という話が勉強会でも出ていた。というか実際のとある企業の話が例に出ていた。心理的安全性は目的ではない。これは言われてみればその通りだが、忘れそうなので最初に書いておく。

②心理的安全性があると、意味のある対立が産まれやすくなる

心理的安全性(チーム)
→5~20名程度のチームを対象にした研究群。チームと個人の相互作用に注目。
Edmondson(1999)チームメンバーがリスクある行動をとった場合、これら のアクションがsafetyとして、チームメンバーに受け入れられる状態。
Brueller&Carmeli(2011)メンバーの防衛的推論を建設的推論に切り替えさ せ、チームが学習行動によって価値を生み出すために必要な「社会心理学的メカニズム(social-psychological mechanism)」。

これ、Edmondsonの定義は「へー」という感じだが、Brueller&Carmeli(2011)の定義は結構面白い。自分なりに読み替えてみると、「メンバーの防衛的な考えを、建設的な考えに切り替えさせ、チーム学習の方向に持って行く社会心理学的メカニズム」これが心理的安全性の定義だとすると、全然印象が変わってくる。そして、最初に説明した「チームの成果」のための手段が心理的安全性ならば、この定義を覚えておく方が役立ちそうだなと感じた。

ちょうどいま、「チームが機能するとはどういうことか」という本を読み直していた。心理的安全性の定義をしたEdmondsonさんの本だ。その中に「学習しながら実行する」という言葉が出てくる。どうしても日々、実行のほうに意識が偏りがちで、でも学習のためだけに時間がとれるのか?というと難しいのも事実だ。だから、日々の実行しながら学んでいく、そしてそれがチームの存在理由だ、というような話は、あらためて今の会社で毎回新しいチームをつくるときに、確認してもいい内容だとメモした。

話は戻って、「メンバーの防衛的推論を建設的推論に切り替えさせ、チームが学習行動によって価値を生み出すために必要な社会心理学的メカニズム」のことをもう少し考えてみる。

Edmonson(2004)個人とチームの関係
個人は、特定の状況における特定の行動をとるとき、対人関係のリスクを暗黙的 に評価しながら、行動を意思決定する。彼らはアクションを実行した際に、批判 されたり、恥をかいたりしないかを自問自答している。このアクションの意思決 定には、個人を取り巻く環境(チーム)が大きな影響を与える。周りから自分のアクションをどう思われるかを考えた際に、個人が快適に意思決定をできるよう なチーム環境が求められる。

なるほど。学習というのは、失敗が絡んでくる。失敗に対しての批判への恐れ、自分が恥をかかないか、を絶えず個人が気にしているというのもわかる。これによって失敗できる環境にはなるのかもしれない。ただこれだけだと、失敗しやすい環境ということはわかるけど、チーム学習が促進されるのかは、わからなかった。でも次のこれを見てわかった。

Edmondson(2012)チームにおける心理的安全の効果
・率直に話すことが推奨されるため、周囲の反応に対する不安が軽減する
・不安による脳の処理能力低下を免れ、明晰な思考ができる
・自己表現の質や生産的な話し合いにより、意味ある対立が生まれやすくなる
・失敗を容易く見なすことができるようになる
・斬新なアイデアや可能性を提案しやすくなる
・目標の達成に意識が集中するようになる
・リスクをとりやすくなり、責任意識が高まる

で、チーム学習の促進は、上の項目の「意味のある対立が生まれやすくなる」というフレーズをみてイメージがわいた。失敗に対しての批判への恐れがない、自分が恥をかかないかを気にしていない状況においては、各自が「自分にとって正しいと判断すること」をやろうとする。

しかしポイントは、それぞれのメンバーの見解が異なることだ。見解が異なれば「なぜ違うのだろう」という形でチーム学習が進むのはイメージがわく。見解が異なることを面白がるよりは、対立を恐れる方向にいって、学習が進まない方向にいっているケースも見てきた。ここまできてやっと「心理的安全」というフレーズからうける印象と、「チーム学習」が自分の中で結びついてきた感じだ。

別のときに神谷さんに教えてもらったことを思い出した。「人間関係に関するコンフリクト」と「仕事内容に関するコンフリクト」みたいな分類があって、後者は生産的だけど〜みたいな話だ。心理的安全性があることで「仕事内容における対立」はおきるが、「人間関係に関する対立」はおきないっていう考え方もできるかもしれない。

③心理的安全性のために取り除くべきは「自分が変化することに対する不安」であり「組織内で”自分の生存”が危ぶまれる危機感」は維持したほうがよい

ここは特に面白い。「悪い意味でのぬるま湯的な感じ」の印象を「心理的安全性」にもっている人にはこの説明をするとよいのだろう。

Schein(1995)
Survival Anxiety:このままでは組織内での“生存”が危ぶまれるという危機感
Learning Anxiety:変化することに対する不安
Survival Anxiety>Learning Anxiety→組織学習が促進
Survival Anxiety<Learning Anxiety→組織学習が停滞

ただこれ、考え方としてはわかるんだけど、「変化の不安」だけ取り除いて、「このままじゃまずい」という危機感はどうやって維持するのかわからない。

勉強会のときの個人メモには『「フロー状態」における「個人の能力に対応する適切な難易度の課題がある」と関係がありそう』と書いてある。既に内容は忘れたけど、これをヒントに考えてみよう。たぶん、

「組織内で生き残れないかもという危機感」<「変化することに対する不安」

という状態は、業務が難しすぎたりして「無理だー」となっている状態ということかな。「生き残れるかどうかやばいぞ」と思いつつ「この業務だったらクリアできる(=変化への不安が少ない)」という状態だとよい、ということか。

そう考えると、上にかいた『「変化の不安」だけ取り除いて、「このままじゃまずい」という危機感はどうやって維持するのか』というのは質問が間違えている。確かに上のScheinの引用だと相対的な大きさとしてどちらが「大なり」なのかということだからな。だからまずは

「Aさんの組織内で生き残れるかどうかの危機感度」

というものが存在する。その上で、

「Aさんが組織内で生き残れるレベルの難易度の業務」

を用意し、

「その業務を実行するのに必要なAさんの変化」に対する不安

を取り除く、という順番か。書くのは簡単だが、こんなものを全員にやれというのか。無理だろ。ぜんぜん危機感がない人はどうするんだろうね。

そういえば、前にやった勉強会「管理部門のキャリア開発」でそういう話をしたな。そんな人は無視だというのは簡単だが、何かできることはないのか、を考えたのだった。その勉強会後に個人的に出た結論は、まずは自分がその人との関係性を築くことがスタートだ、ということだった。ラポールというやつかもしれない。

「危機感を持て!」と言われて持つのはあり得ないだろう。信頼関係がないと、話を聞いてもらえない。「私からみると、このままだとまずいなって見えるんですけど、ぶっちゃけどうですかね?」というセリフを、聞いてもらえるかどうかがスタートだ。で、結論として「別にまずくない」というのも十分にありえる。

でも、いままでのことを振り返ってみると、それこそ「人間関係のコンフリクト」がない状態で、「見解の相違」を互いに話し合える状況になっていたかというと、そこまで至ってないことがほとんどだったなーというようなことを振り返っていたのだった。少なくとも自分のチームメンバーとはそれぐらいの感じになってないと、いろいろなときに困るよなとは思う。できてるかどうかは別だ。

④高い心理的安全性のチームメンバーの振る舞いは、他のチームのメンバーから見て自己満足・傲慢と見なされてしまうリスク。

心理的安全性のリスクの話とか考えたこともなかった。というか何においてもリスクの話をいつも考えてないな。他のリスクも引用しておこう。

Edmondson(1999)より抜粋して要約
心理的安全性が高まっても、メンバーの学習実践が促されないリスク
→心理的安全性は、学習する態度を促すが、実践につながるとは限らない。学習 を実践するためには、1説得力あるチーム目標や、2学習意欲を高める個人のニー ズ、3個人の基本的な思考力や、4個人の努力が必要。

過度な心理的安全は、有害になるリスク
→カジュアルな会話に過剰な時間を消費する。

心理的安全のために組織構造を取り除くのは逆効果のリスク
→反対に、役割や構造に基づく体系的な思考と行動を取り除いてしまうリスク。
心理的安全性が、組織内の緊張感を高めてしまうリスク
→高い心理的安全性のチームメンバーの振る舞いは、他のチームのメンバーから見て自己満足・傲慢と見なされてしまうリスク。

心理的安全が、人間関係を悪化させるリスク
→根本的に意見が異なる相手と心理的安全を高めると議論は非生産的になる。

根本的に意見が異なると、心理的安全性を高めても折り合いがつかない!!!つまり学習とかじゃないレベルってこと?なんかわかるぞ。

以上です。チーム内での学習が促進されているかというのを気にしていこうと思いました。

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