慧音のひとり言ーレミゼを語る⑤ー

※7/4追記しています

今日は少し早い帰宅です。明日は土曜日ですね。週末に書き溜めておけば平日楽だと知っているにも関わらず先週はできませんでした。そんなわけで景音です。

さて、本日は久々の更新になります、「レミゼを語る」第五回。今回から第一幕、舞台は8年後、1823年のモントルイユ・シュル・メールに移ります。前回までのバックナンバーはこちら。

それでは、参りましょう。

At the End of the Dayーー一日の終わりに

まずですね、僕が好きなのが、映画版のこの曲の始まり方。というか、「What Have I Done?」からの続きですね。ヴァルジャンが黄色いパスポートを破って崖から投げ捨てる。その紙片が風に巻き上げられ、どんどんとヴァルジャンから遠ざかり、……。そして「At the End of the Day」の曲始まりと共に急降下して、モントルイユにて看守から警察官へと昇格したジャベールが登場する。ここの時の流れ方というか、ヴァルジャンの旅立ちの象徴と、そしてそれを追う立場であるジャベールが、部下を引き連れた警察官となっている、宿敵ジャベールもまた新たな道を歩み出している、というのが。好きです。ミュージカル版だとここでジャベールは出てこないのですが、映画版では半ばジャベールの視点を通す感じでこの曲が始まるんですねぇ。あと、雨が降っているのも推しポイントです。惨めったらしい汚い田舎感が、とてもレ・ミゼラブル。

ミュージカル版は「What Have I Done?」終わりでタイトルロゴ(ユゴー大先生直筆)が出ます。始まった感、テンションの上がり方がやばいですね。そして、「At the End of the Day」が割とアップテンポな曲なので、観客をどんどん引き込んでいく、と。
25thだと、「What Have I Done?」のアウトロで照明が客席から舞台にどんどん集約していくライティングが好きです。マニアックでごめんなさい。あとは、一旦センターから出てきたアンサンブルたちがバックライトを浴びて立ってて、歌う直前になってからマイクの元へ歩いていくのが、演劇見てるみたいで(この言い方はおかしいか)好きです。
10thはキャストの生着替えがチラッと見えます。

アンサンブルたちは映画版が一番汚くて25thが一番綺麗ですね。顔が汚れてないのは大きい。映画版は特殊メイクも使ってますから。
曲のテンポは10thが早くて映画版が遅い感じがします。10thは勢いがある。映画版はむしろ惨めさを最大限に押し出して、観客に当時の人々の悲惨な暮らしを感じてもらおうという狙いがある気がします。

前半のみんなで歌う街中の部分は大して言うことはありません。笑。
このままだったら死ぬ!誰も助けてなんかくれない!っていう歌です。

で、場面は黒ガラス工場へ。これはモントルイユにやってきたヴァルジャンが作った工場で、ヴァルジャンはこの功績が認められて市長に推薦され、断りきれずに市長になっそうです。旧演出では工場のたまり場、女性たちの井戸端会議みたいな形で歌われますが、新演出はちゃんと黒ガラス作ってます。

この、工場に入ってから、歌割がちょっと変わりました。
旧演出は、

Foreman: At the end of the day you get nothing for nothing
                 Sitting flat on your butt doesn't buy any bread
Male Worker 1:There are children back at home
Male Worker 1&2:And the children have got to be fed
Male Worker 2:And you're lucky to be in a job
Female Worker:And in a bed!
All:And we're counting our blessings!

なんですけど、この「Male Worker」の部分が新演出では「Foreman(工場長)」パートとなりました。また、工場長以外の男性はこの初めのシーンでは出てきません。原作をみると「ヴァルジャンは男女間でのトラブルを避けるために工場で働く場所を男女で分けた」というような記載がありますので、それに合わせてWorkerを女性のみにした、ということだと思います。ちなみに原作だとこの工場の女性の方の監督はもちろん女性でした。結局新演出でも黒ガラスの回収に男たちは来ますが。映画版はもうガッツリ女性だけの工場でしたね、男性労働者は出ず、工場長だけが男性というハーレム状態。女工たちはボロクソに言ってますが。なので、映画版だと逆に「Male Worker」パートを女工たちが、「Female Worker」を工場長が歌っています。男性が「寝るところもな!」って言うとなんだかいやらしさしか感じない。女性が言ってもちょっといやらしいですが。

そこで働くファンティーヌの元に手紙が来たのが事の起こりです。ミュージカル版では工場長から手紙が渡されます。映画版だとすでに持ってますね。で、それがファクトリーガールに見つかって暴露されると。元々ファンティーヌは綺麗な金髪と白くて大きく綺麗な歯を持っていたらしく、それも嫉妬の原因だったんでしょう。原作では、頻繁に手紙を出すのを怪しまれてばれます。この手紙は言わずもがな、ファンティーヌの娘コゼットを預けたテナルディエ夫妻とのやりとり。金を寄越せと言われているんです。
この曲で一番好きなのはファクトリーガールですが、25thに関して言うと工場長の「オイ!!」が一番ですかね。

ところでこの工場でのシーンですが、勝手にファンティーヌに目線が行く仕掛け、ファンティーヌが今後の重要人物だとひと目見てわかる仕掛けがあります。映画版だと衣装。ミュージカル版だと立ち位置とかですね。
映画版が一番わかりやすいですね、他の女工は寒色系や茶色のドレスを来ているのに、ファンティーヌだけがピンク色。
10th、25thの衣装で言うと、ファンティーヌは帽子をかぶっていません。また、25thはドレスも他の女工が青を来ているのに対して白っぽい衣装。
立ち位置に関しては、「工場長からこっそり手紙を渡されるファンティーヌ」と「それを遠目で見てヤイヤイ言い合う女工たち」という対立構図になってるので、ファンティーヌに目がいく。女工たちはみんなファンティーヌに注目してますしね。

そして、マドレーヌ市長となったヴァルジャンの行動。ミュージカル版では「騒ぎを聞きつけてやってきて『解決しとけ』と言うだけ言って去る」というなんとも素っ気ない態度です。え、行ってしまうん?と思う方もいるかも。映画版では「自分で解決しようとしたがジャベールが来ているのを見つけ工場長に任せて急いでそちらに向かう」という流れになっています。これはミュージカル版を映画にするにあたってストーリー的に不思議なところ、甘いところを修正したものだと思われます。それでは原作はどうなのか?マドレーヌ市長、一切関わってません。ファンティーヌはマドレーヌに解雇されたと思いますが、その実これは工場の女監督の独断です。ならなんでマドレーヌ市長はミュージカル版だとここで出てくるの?おそらくですが、「8年を経て市長となったヴァルジャン」を第一幕一曲目で提示しておく必要があったんじゃないかな、と思います。それならストーリー的には映画版の方が本来のマドレーヌには近いですが。

さて。原作においては、ファンティーヌが解雇されるシーンは第五編の八。「What Have I Done?」は第二編です。じゃあ第三編からは何かって? それはまた後日、僕が原作をもう一度しっかり読み直す余裕が生まれた時にお話ししましょう。だって原作、めちゃくちゃ長い。笑。

原作はちょっと敬遠、だけどミュージカルでは省略されているエピソードが知りたい!という人はぜひ新井版漫画を!もしくはアニメ:少女コゼットを!少女コゼットその名の通りコゼットが主人公ですのでオリジナルエピソードも多々盛り込まれていますが。

それでは今日はこの辺で。次回はかの名曲「I Dream a Dream(夢やぶれて)」を語ります。

それでは、良い夢を。

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