「伏線」と「フラグ」。タイミングの違い。
伏線というものは誰もが聞いたことのある言葉である。これは主に物語の時系列の流れの中で、前に起こった出来事が、後の出来事のきっかけや解決の糸口になっている、というものだ。
しかし一方で、今の世の中には「フラグ」という似た機能を持つ言葉があり、既に多くの人が知るところのものである。こちらも時系列的に前の要素が、後ろの出来事のきっかけとなって、それを誘発するという類のものだ。
「伏線」は魅力的だ。
それは私たちをワクワクさせてくれる。物語の面白さを持続させ、飽きさせず、最後まで期待感を持たせてくれる。
だから世の中にある物語は、こぞって伏線を張る。あちこちにそれを張り巡らせ、置いておき、匂わせ、そしてそれを適当なタイミングで回収する。
あるいは物語の受け手も、伏線を期待し、物語のあらゆる要素について伏線を疑ってかかる。希望に満ちた眼差しで伏線を望む。
これに対して、フラグはもっとシンプルだ。それは元々のプログラミング界隈での定義を引き継ぎ、単になにかが起きるわかりやすいきっかけ、という意味で用いられることが多い。
こちらも物語にある種の流れを生み、それを起伏として興味を持続させ、面白さを増す効果がある。
どちらも物語的には、その構造にうねりを持たせ、受け手にひとつの気持ちよさを与える機能を持つ。
だが、伏線とフラグには明確な違いがある。
・伏線:それが明かされたときに機能する
・フラグ:それが置かれたときに機能する
つまり、伏線とは隠されているものであるから、それが置かれた瞬間にはまだそれとわからない。だが、伏線が誘発するなんらかの出来事が起こった瞬間に、あれは伏線だったのかと了解するのである。
たとえ、勘の鋭い人が伏線を疑っていたとしても、それが回収されるまでは確信が持てない。
そのため結局、伏線とはそれが明かされた瞬間に機能するものだと言えるのである。
一方でフラグとは、そもそも、それがフラグであるとわかるようにおいて置かなければいけないものである。何故ならその名称にあるとおり、これは「旗」であるからだ。
なにとなにが対応しているのか、どのように繋がっているのかが明確に見えなくてはならない。そのための目印なのである。
だから、フラグはそれが置かれた瞬間(一般的には、フラグが立つと言うが)、もう既に機能している。フラグは隠されていない。もっと言えば、これから起こることの大方の予想が、フラグが立つことによって理解できるものであると言える。
このように、伏線とフラグは、時系列的に前の要素が後ろの出来事を誘発するという意味では同じ種類のものだ。
しかし、その機能が起こるタイミングが違い、それに応じてその楽しみ方も異なる。
伏線はある種の答え合わせだが、フラグはある種のサスペンスである。
そのために、それを期待する物語の受け手の求めるものも異なる。
だから、伏線とフラグは使い分けられていなければならない。
このふたつを正しく理解し、正しく運用できたとき、その物語はより起伏に富んだ、面白く魅力的なものとなる。
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