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「満足」そして「不満」を企画案の種にする

あなたはとある企業のクリエイターで、出勤するやいなや上司に呼び出される。
心当たりもないまま、少し緊張しながら会議室へ入ると、神妙な面持ちの上司が言う。
「実は、きみに新企画を任せたいのだが」

詳しく聞けば、大枠は決まっているがほとんどはあなたの自由に決めていいプロジェクトとのこと。「どうかな」という上司の確認に、あなたは物怖じしつつも頷く。
とりあえず明日までに、企画案を数ページにまとめて出すことになった。

自分の席に戻って、しばしぼーっとする。
さて、なにから手をつけようか?
………
……

このような場合、すぐにあれこれと思いつく人間はそう多くない。
大抵は責任の重さや、アイデアを他人に見せることの不安や、筆が進まない苛立ちに悩まされることになる。

しかし、あなたは新しい企画づくりを任されてしまったのだ。
四の五の言っている時間がもったいない。
そして、実のところ、あなたの抱えている不安は杞憂に過ぎないのである。

新しい企画を作るとは、そんなに難しく考えるものではない。
とどのつまり、以下のどちらかについて思いを巡らせてみれば、意外と簡単にアイデアの種はうまれるものだ。

・満足を共有する
・不満に共感する

前者は、あなたのこれまでの経験から、楽しかったこと、嬉しかったこと、興奮したこと、熱中したことなど、「満足」の瞬間を探し出すことに焦点を当てる。
もし、あなたが任された企画案のジャンルがわかるなら、そのジャンルにおける満足の経験が見つけられるとなお良いだろう。
そして、自身の過去の満足について理解したら、その感情を他の人――ここではまず、企画案を最初に見せる上司――にも抱いてもらえるような、そんな企画を目標にする。
すなわち、「好きを形にする」のである。あなたが好きという感情を抱いたものを、他の人にも好きになってもらう。そういった方向性の、アイデアの出し方だ。

そして後者は反対に、あなたのこれまでの経験から、物足りなかったこと、辛かったこと、怒った、悲しかったことなど、「不満」の瞬間を拾い上げることに焦点を当てる。
こちらも、ジャンルは、これから作ろうとしている企画案のものと同じにできたほうが良い。
不満について理解したら、その感情を抱かないようにするにはどうすればよかったのか、ということを提示できるような企画を目標にする。
すなわち、「不足を補う」のである。「なんでこれがないんだろう?」と思うものを提案したり、「なんでこんな不便なんだろう?」と思うものの改善案であったり、こみ上げてくる不満を、企画提案という形でぶつけるアイデアの出し方だ。

このように、あなたの満足あるいは不満の経験に焦点を当てることで、企画は一歩、前進する。
なんだか得体のしれない大きなものを相手にしているような気持ちから、きっと解放されるのだ。それは、「あなた自身」という、最も身近なユーザーがいることをまず思い出す作業でもある。


……
………
少し時間が経ち、上司が様子を見に来た。
突然の話だったので、心配してくれているのだろう。
あなたは上司の言葉に、なんとかなりそうです、と返した。
上司は驚いたように、しばしあなたの顔を見つめていたが、どうやら納得してくれたようである。
「もし、なにかあればいつでも相談してくれ」と言い残して、去っていった。

あなたはその背中を見送り……さて、作業の続きだ。

企画を考えるというのは、大きなことのようで、しかしそれほどではなく、だがけして油断はできないものだ。
それは「企画案」という書類や計画を作ることが目的なのではなく、その企画を通して誰かに嬉しくなってもらうことが目的だ。

だから、あなたの満足や不満に着目しよう。
そしてそれを、他人に知ってもらったり、解消してあげたりできるような形として、提供することを目指すのである。

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