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キャラクターの行動力は「ちょっと」にしよう

A「ちょっと、はやくどきなさいよ……」
B「……無理だ。俺が先に座っていた」
A「暑いじゃないのよ……もうこのベンチ、日陰ほとんどないんだけど?」
B「なら、建物の中にでも入っていればいいだろう」
A「イヤ。いつCさんが来るかわからないでしょ」
A「てか、待ち合わせの何時間前に来てるのよ」
B「……それはこっちのセリフだ」
A「はぁ……二人っきりだと思ったのに、なんでこうなるのよ――」

物語にはキャラクターの行動力が不可欠だ。
私たちはストーリーを読み進めるときに、眼前のキャラクターがどう動くのか、その結果はどうなるのか、といったことに注目している。

だから、キャラクターが行動しなければ物語ではない、とまで言える。

では、キャラクターの行動力はあればあるほど良いのだろうか?
物語に登場するどのキャラクターも、その命を燃やすほどに思い思いに動き、そして結果を出し、さらなる成果を求めて動く……
それこそが、適切な物語の状態ということだろうか?

もちろん、そうではない。
結論から言って、キャラクターの行動力は「現実の人間よりもちょっと」程度あればいい。

物語において、最も注目されるのはキャラクターである。ということは、そのキャラクターの行動を、読み手に最後まで追いかけ続けてもらう必要がある。
その、興味を持続させるためには、行動力がありすぎてもなさすぎてもダメなのである。

もし、行動力がありすぎる場合どうなるのか。
そのキャラクターだけで、物語上全ての流れを回すことができる。あらゆる物事に介入し、事件を解決し、他者を幸せにできる、そんなふうに思ってしまう。
そのようなキャラクターがいた場合、大抵は「もうひとりでいいじゃん」という感想が抱かれることになる。

つまり、他のキャラクターや、読み手の応援がいらないと感じられてしまうということである。

すると、行動力があるにもかかわらず、そのキャラクターは注目されなくなる。興味を失ってしまうのだ。
これでは、物語を読む意味がない。

また、行動力が全くないのは、当然、ストーリーが進まないので論外である。

こういったことを考えると、キャラクターの行動力は「ちょっと」程度が適切だと言うことになる。
私たちは普段、自分が想像しているように思い通りに行動できない。
だからそのストレスを、物語のキャラクターに寄り添うことで発散する。
それは、キャラクターを応援するということである。

だから、キャラクターの行動や結果に一喜一憂してもらえるように、その行動力は「普通よりもちょっとある」くらいにするのがちょうどよいのである。

これは、物語を創作する場合は特に、意識しておきたい事柄である。
その「ちょっと」の感覚が読み手の求めているものと合致すれば、その物語は大いに成功する。


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