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鉄騎鋼女#2「シーン作成の課題」

第2話を元に、シーンモデリングについての諸々

3DCGにはロングショットが得意すぎるという罠がある

手描きの漫画と違い、3DCGでモデリングしてコマの絵を作ると、全身を入れる絵はなんぼでも作れる。一度ポージングしてしまえば、どんなアングルだろうと、周りに何が置かれていようと、気に入る絵になるまで幾らでも絵を撮ることができる。
そのため、ついついフルショットを多用する罠に落ちることがある。最近の3DCGを使ったアニメでも、ロボットのアクションシーンなどで延々とロングショットを使い全身を画面に入れているケースをたまに見かける。せっかくモデリングしたのだから隅々まで入れたくなるのは人情だが、ロングショット故に画面内で対象が小さすぎて潰れてしまい、逆に何をやってるのかよく分からない絵になるケースもある。
手描き漫画の入門書では「アップを多用するな」と書かれている。3DCGでは「ロングを多用するな」「ロングは目的を絞れ」と言える気がする。
この部分は、手描きと3DCGの大きな相違点のひとつだと思う。

第2話 最初のページ

上例は、ツッコミどころが多すぎるページ。(^^;)
このページを例に、カワウニが感じている課題を挙げてみる。

3DCGは絵が重い

手描きなら背景が無いコマも珍しくない。白黒二値の効果もあるが、背景を描き込みすぎるとキャラが埋没してコマの目的がブレやすくなる。
3DCGだと、基本すべてのコマに背景がある。しっかり色もついている。そのため、どうしてもページ全体が重くなる。(うるさくなる)
上例でも、背景が暗めなこともあり、自分としては雰囲気が少々鬱陶しく見えてしまう。キャラの心情と上手く合わせることが出来ていない。
こういう所は、むしろ映画などで勉強すべき所なんだろう。

キャラを浮き上がらせる工夫

映像系のノウハウでは、ライティングの勉強は重要なようだ。
上例ではキーライト(メインのライト)しか使っていないので、背景とキャラとの境界も分かりにくい。バックライトぐらいは使うべきだろうが、ロングショットや複数人数ではどうするかなど、勉強する点は多い。ヒー!
手描き漫画の場合、キャラの描線と背景描線を繋げないという手法がある。キャラの周囲の背景を曖昧に描く手法もある。
3DCGだとそのままでは使えない方法だが、バックライトの代わりにキャラの周囲にグレーのグラデーションを乗算する方法も使えるかもしれない。いずれ実験してみるか。(・_・ )
 上例では1コマ目と2コマ目は同じモデリングデータ(シーンデータ)を使ってカメラだけ1コマ目用と2コマ目用に分けている。同じシーンで複数のコマを描くのは、作業量を減らす意味でも、3DCG漫画の常道だと思っている。(カワウニの経験則)
2コマ目はもっとアップにして(なんで肘まで入れちゃったかなぁ)ライティングを変えるのも手だったな。

余談:アニメーションについて

「3DCGならアニメーションにすべきだろう」と思う向きも多いと思う。
ハニセレスタジオではそもそも無理だが、Blenderに移行してもアニメーションはメインにしようとは考えていない。
拙作「ATで逮捕しちゃうぞ」をアニメーション化すると、2クール分ぐらいの分量になる。個人でどうこうできる作業量ではない。10分程度のムービーでも作るならともかく、ストーリー物をやるには敷居が高すぎる。ムービーを作ると、次には台詞の声や効果音、BGMの問題も発生する。
故にアニメーションデータ化はメインには考えていない。

シーン作りは蓄積が大事

いろいろ課題は多いが、3DCGの良いところは再利用がしやすいところ。
手描き漫画では基本的に毎回1から描くことになるが、3DCGはモデリングデータを貯めることで何度でも再利用が出来る。
MAPデータの蓄積が、そのままロケ地の選択肢となり、なるべく新規モデリングを減らすこともできる。ネームを練る段階で作業量の調整ができる。

第2話のロケ地

鉄騎鋼女では、新規に作ったMAPデータはほとんど無い。もともとAT逮捕のオマケで作った作品なので、ロケ地も小道具もほとんどがAT逮捕の流用品。完全新規なのはストーリーを練ることぐらいで、実は作業量は見た目のわりにはそれほど多くない。
こういう所が、3DCGで漫画を描く大きなメリットのひとつだと思う。

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