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かわせひろし
2018年7月7日 09:48
邂逅 暗く冷たい宇宙空間で、「彼」は不満を募らせていた。 それも生半可なものではない。数十年じっくり熟成させた、年代物の逸品だ。 とにかく暇だ、とディスカバリー51号は考えていた。 D51は深宇宙探査機のシリーズの一台だ。ディスカバリーシリーズは、太陽系から放射状に、あらゆる方向に打ち出された。恒星間を漂う浮遊惑星の発見と探査を目的としている。 恒星系から放り出され、自ら輝かない浮
2018年6月10日 15:59
こんにちは赤ちゃん「ふやああああ」 どこか気の抜けた声でその子は泣いた。「あー、よしよし、まあくんどしたのかなー、ウンチかなー、おなかすいたのかなー」 マリコは声をかけながら、赤ん坊を優しく抱き上げ、慣れた手つきで確認する。 うん、おなかがすいているみたいだ。ミルクの時間だ。 こちらも手早く用意すると、哺乳瓶をそっとまあくんの口元に差し出す。まあくんはすぐさま吸い口をくわえ、もにゅも
2018年5月3日 18:09
吾輩は猫である 吾輩は猫である。 名前はまだない。 そう書き出すのはこの地の古典小説である。 だがこの話は違う。 名前はある。 タリン・マリン・ハッセルホッスル一七八五という。 一七八五は出自の確かさを示す。 自慢である。 なのにこの家の主は吾輩のことをタマと呼ぶ。 略し過ぎである。 しかも分かっていて略したのではなく偶然なのである。 なぜなら主は吾輩は猫ではないことを知