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全然青春じゃない部活だったけど

 中学高校の頃、部活には全然熱心ではなかった。
 家から学校まで1時間半くらいかかったし、身体があまり丈夫じゃなかったのもあって。ラクな文化部に入ろうと思っていた。

 入学して間もなくあった文化祭で、展示物を見ながら、「新聞部に入ろう!」と決めた。アンケートの内容や集計がとても面白そうで。校内で出す新聞も自分たちで作れるのだと知った。

 新聞部での私は、全然青春じゃなかった。


 友達たちと誘い合って部活に入る性分じゃないので、迷っている友達にだけ声をかけた。でも彼女たちは後にやめてしまう。部活を辞めて迷っている子がいる度に新聞部に誘ったけど、あまりに活動が少ないから、だいたい辞めてしまった。


 私には運動部の友達が多かった。
 活発で、女子校だけど下級生たちに人気のある子が多かった。

 文化部が活躍する場といえば、文化祭。演劇部や放送部の子たちに人気が出る。校内で発表する日を私も楽しみにしていて、知っている同級生たちの活躍をドキドキわくわくしながら観た。内容も楽しかった。

 運動部も文化部も、そうやってみんな活躍していた。キラキラしていた。青春だった。

 新聞部が忙しくなるのは、文化祭で展示物を出す前くらい。アンケート調査をし、集計を出す作業、その結果を見るのは楽しかった。みんなこんな風に考えてるんだー。これって多数派なんだー。などと、普段口にしない思いを知れる。一番の楽しみはそれくらい。
 年に数回出す新聞を書く時も、担当の記事が終わればそれだけ。副部長になった時も、予算をもらう全体会議に出たり、新聞の隙間を埋めるために、文章を書いたり。

 6年間、総じて忙しくなかった。


 そんな「青春傍観者」だった私が、部活に関して何の思い出があるのか。


 少ない人数、少ない活躍の場だったけど、楽しくて6年間続け、副部長になった。6年間続けているのは私一人だったのに、部長にならずに、頑なに副部長になったのは、それなりに考えがある。

 目立ちたくない。二番目が好き。なのは認めよう。でもそれより、私が部長になると、誰も出てくれなくなると心配したからだ。部長になった子には、その子の何人かの友達が、かけもちで新聞部に入ってくれていた。ちょっと忙しくなる文化祭前に手伝ってくれる。私がもし部長になったら、すべてを私がまかされてしまうに違いないと思った。彼女らをまとめていける気もしなかった。滅多に喋らない子たちばかりで、部活にも出たり出なかったり。
 部長は文化祭前、そうもいかない。

 すると、帰宅は部長と二人並んで帰る日が度々出てくる。

 彼女は、ませたグループの中でも独特で、今で言う「チャラい」雰囲気が少々あった。お嬢様学校だからか、彼女の発する言葉は信用できないのだと、陰でほんの少しだけ敬遠されていた。
 
 学校から駅までは坂道ばかり30分。下りの帰りは、靴の音を少しベチベチさせながら歩く。指定の革靴の底は平らで、下り坂ではどうしても音がするのだ。話すことがなく、足音だけが響いている時もあった。でも私たちは並んで帰った。

 何を話したら良いんだろう。共通の話題がない。普段よく喋る友達だったら、少々無言が続いてベチベチ足音立ててもどうとも思わないけど、「何か話さなきゃ」と思うと、ベチベチ音は余計に気になる。

 なんにも思いつかないなあ。

 元々気が利かない私の中高生時代なんて、もっと気が利かない。今以上に世間話なんてできなかったし、今以上に話を広げる努力もしなかった。

 しばらくベチベチさせていると、決まって話し始めるのは彼女の方だった。

 車やバイクが好きらしくて、特にバイクの話をちょこちょこしてくれた。私には何のことだかさっぱり。意味もよくわからないし、興味もわかない。それでも彼女は静けさを埋めるために話してくれるのだ。バイクの話を。
 そしてそれにからんで親とのやり取りも。
 そのやり取りを聞いて、ご両親との関係も透けて見えてくる。
 ふぅん。そんな関係性なんだ。ウチと違うなあ。
 そんな風に思いながら聞く。
 うなずく以外は黙って聞いている私に、「反応悪いのう」と思っていたかもしれない。「こんな話してもわからないよね」とか。
 仕方なく喋っていたにしても、私は彼女の思いを感じられるようで、それが面白かった。そしてありがたかった。
 
 また二人並んでベチベチ、足音が響く。

 いい加減な副部長に文句を言うわけでもなく、彼女は部長を全うして、私たちは引退した。

 その後も、特に親しくなったわけでもない。

 私をつまんない子と思っただろう。でも私は彼女が嫌いじゃなかった。


 私にとって部の活動と言えば、年にほんの少しのアンケート集計と新聞づくり。
 そしてその時、なんにも知らない友人の思いを感じる時間。二人並んで歩いた帰り道。


#エッセイ #思い出 #新聞部 #会話下手 #副部長 #下校

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