「可愛くて笑っちゃう」息子

 幼い息子が可愛くて、むっふっふと笑っちゃう。


 「なんで笑うの!」
 かんしゃくの強い息子が、また絡んできて怒っている。
 「えっ。可愛いからだよ」
と言うと、「可愛いから笑うの? 僕はそんなので笑わない!」と突っかかってきた。
 「息子クンよ。息子クンが笑わなくても、可愛いと笑っちゃうこともあるんだよ。息子クンは違っても、笑う時にはそういう気持ちがあることだってあるんだよ」

 発達のゆっくりな息子だったので、ちゃんと教えなくちゃわからないかもしれない。
 こんな冷静に話せた気はしないけど、とにかくそう思って説明した。

 偏ったことばかりができて、周りの同級生ができることはできない。
 焦ってはいないけれど、担任の先生に責められた。
 でもできるとかできないとかを、私は責めたくない。時々イライラ怒っちゃうけど、できる限り、何が大切かを伝えたい。

 自分も人も尊重される人間であるとか。自分の気持ちとか。人の気持ちとか。表現するとか。伝えるとか。わざわざ伝えないこととか。好奇心とか。

 息子はそうであっても、周りがそうじゃないことだってある。
 周りがそうであっても、息子が違うことだってある。

 それは、どちらかが「ダメなこと」ではないんだよ。

***

 先日、息子の薬をもらいに、かかりつけの病院に行った。
 インフルエンザ予防接種を受ける時期で、小児科内科だから赤ちゃんや子供が順番に呼ばれている。待合室から診察室に行く間に、中待合室がある病院。中待合には2~3組が呼ばれて待機する。
 先ほどまで中待合で静かに座っていたはずの男の子が、中で大泣きを始めた。
 「いやだ~」「ひ~~~」「やめてえ~~」「いたい~いたい~」「いやだああ~~」「うわあああ!!!」

 もう全然止まらない、追い詰められた感満載の訴え。
 声も悲壮感でいっぱい。

 お医者さんの「すぐだよ~すぐ」「ハイ、終わったよ~」って聞こえた後にも「ひ~~~んひ~~~ん」って高い声で泣いている。

 思わず笑って息子を見たら、息子もめっちゃ笑っている。
 そのうち、診察室から中待合に向けて、カーテンを超えてポーンとぬいぐるみが一つ飛んできた。
 どうやらその子がかんしゃく起こしてぬいぐるみを投げたらしい。
 飛んできたぬいぐるみを見て、息子とますます笑った。

 「可愛いね」と互いに言って、息子の成長を愛おしく見た。


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読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。