これを、クジ運が「良かった」と言うのかしら

 コンビニの入り口近くの棚で、ゲームやアニメのキャラクターグッズが陳列されていることがある。陳列されているのだけど、それをそのまま買うのではなく、クジになっているシステム。カードをそこで取り、レジでそれを出し、支払いを済ませ、クジが引ける。


 好きなキャラクターが並べば良いのにな~と思っていたものの、なかなか並ばないので、そんなものだよなあと諦めていた先日。

 とうとう並びました。もう遅い気すらする。ゼルダの伝説(ブレスオブザワイルド)のキャラクターグッズ。


 既に飽きてずいぶん前にやめてしまっている人、新しい面白いゲームをしている人の方が多いでしょう。私は一つのゲームに何年も何年も執着してしまう。大好きなゲームを繰り返し何度も始めからするし、なめ回すように遊びつくす。もっとスマートに戦う方法を考えたりして、少しずつ上手になっていき、コントローラーをカチャカチャ使っているのが楽しいのだ。ゲームのことは、別の機会に書きたいと思います。


 その日、夫と一緒にコンビニに入り「わっ! ゼルダだ!」と驚いてから二人でグッズを眺めた。
 なるほど陳列している数からして、何等賞がよく出るのかがわかる。マモノカレー、気持ち悪いけど面白そう。それかマスターソードをかたどったスプーンやフォークが多いのかな。これも悪くはない。他にはでっかい箱に入っている伝説の剣、マスターソードの形の靴ベラ。「これは一等賞でも要らないね」笑いながら他も見る。アイコンの絵が入った小皿や、私が好きな「ブレスオブザワイルド」、以前のシリーズグッズもある。タオルもある。タオルは実用性もあって良いね。ウン、できればタオルが良いね。
 なんて夫と話しながらカードのクジを取り、レジに行った。


 奥から店員さんが箱を持ってきた。一枚引いて、めくる。残念でした!ネットから応募して再チャンスを狙いましょう、的なバーコードが描かれてあるのかと思ったら、目に飛び込んできたものは違った。
 
 「A賞」。

 A賞?

……こういうクジで一等賞とか金賞とかA賞とか、一番良いものが当たった経験がない。

 「A」の意味を把握するのに時間がかかり、しばらくそれを眺めていた。「A?」とか確認していると、店員さんも隣りにいる夫も驚いている。なに? Aってすごいじゃないのよ私! 

 と喜んだのも束の間、A賞が伝説の剣形の靴ベラだったことを知らされる。 

 ええ~~?!

 一番要らないヤツーーー!!!

 「すごく要らない」
 店員さんを目の前にしてその言葉を飲み込む。笑うしかない。夫も隣りで笑っている。
 もう一人の若くて可愛らしい女性店員さんが「わあ、A賞って初めて見た~!」「昨日置いたところなのにスゴイ~!」とか感激してくれている。夫も隣りで笑っている。

 店員さんが持ってきた大げさでデカい箱には、伝説の剣形の靴ベラが入っているようだ。幼稚園児への誕生日プレゼントかクリスマスプレゼントか、ってくらい箱が大きい。店員さん二人で「すごいすごい」と満面の笑みをたたえて渡してきた。夫も隣りで笑っている。

 いやこれ絶対使わない。いい歳したおばさんが、伝説の剣形の靴ベラを当てちゃって、でっかい箱を抱えている。すごく恥ずかしい。もう夫は隣りで爆笑だ。

 初めての一番良い賞が「伝説の剣形の靴ベラ」だなんて。何でこんなところでクジ運を使ったのだ私。

 使わない。
 そして恥ずかしい。

 帰宅して剣を刺す土台に刺してみる。引き抜くと、シャキーン!と音がした。
 靴ベラ使う度にこの音がするのか。

 シャキーン!……シャキーン!

 ……うるさいよ、シャキーン!て。

 しかもシャキーン!の後に大音量で、ゼルダで剣を抜いた時の、お馴染みの曲が流れる。大音量で。

 シャキーン! ピロリロピロリロ じゃーらーらーらあああ~!!!!!

 ……。
 電池は抜いておこう。

 しかも、剣って先がとがっているからカッコいいのに、靴ベラだから先が丸いことが、おもちゃとしての安全性(おもちゃって書いちゃった)と共に間抜けさを存分にかもし出している。そして持ち手から靴ベラの先までの長さが微妙に短くて使いにくそう。

 箱には「あの伝説の剣が靴ベラに!」って書いているけど、「あの伝説の剣」はプラスチックだし。「靴ベラに!」も、なんと!みたいに書いているけど、靴ベラになったところでなんだというのだ。

 靴ベラに!……しなくて良いのに。

 早速、以前、ゼルダの伝説をしていた友人夫婦に連絡をした。
「なんというクジ運(の無駄遣い)!」「いいですね! うらやましくないですけど」次々返事が来た。

 まったくだ。

 この気持ちのやり場がなく、ツイッターにも箱と一緒に靴ベラの写真をあげた。「あの伝説の靴ベラが」あっ間違った。もう伝説の靴ベラでも良いくらいだ。「あの伝説の剣が靴ベラに!」と箱に書かれている文字がとっても空しい。

 46歳。伝説の靴ベラを手に入れる。あっまた間違えた。もう良いや。


#ゼルダの伝説 #一番くじ #マスターソード #靴ベラ #くじ運  

読んでいただいて、ありがとうございます! 心に残る記事をまた書きたいです。