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【書評】首都感染

本書は、大規模な地震や原発のメルトダウンをテーマにした小説を大震災の何年も前に著していたりして、本当に預言者かと思うような作品を次々に発表されている高嶋哲夫さんが2010年に発表した作品です。

若干ネタバレを含めて、作品を読む楽しみを奪わない程度にあらすじを紹介すると、北京オリンピック後の20XX年、中国でサッカー・ワールドカップが開催されたという背景設定のもと、雲南省でH5N1インフルエンザウイルス(鳥インフルエンザ)から変異した致死率60%の強毒性ウイルスが出現。中国当局が大会中に情報を隠したことにより、観戦者を通して世界中に拡散。日本は独自に入手した情報をもとに、事前に検疫体制を強化したものの、やがてそれが破られ都内にも患者が発生。全国への拡散を防ぐために「東京封鎖」が行われた。封鎖された首都で人々が何を考え、どう行動するかという姿を描く... というものです。

元マイクロソフト日本法人社長の成毛さんが、本書を「未来のノンフィクション」と評しているように、様々な事実を積み上げることで、今起こっていることとここまで酷似した世界が描けるのかと恐ろしくなります。今の状況で東京オリンピック・パラリンピックを開催したときに起こる惨劇を想像するには、十分な内容でした。

また、この小説で扱われるウイルスは、現在の状況よりずっと致死率の高いものですが、現在のウイルスがいつ変異するかの予測は不可能でしょうし、もしそうなったときにどんな事が起こるかを知るためのシミュレーション小説と考えることができるでしょう。

現在、世界中で行われている「ロックダウン」戦略が何を意図して、どんな効果が期待できるのかを知るうえでは大変有用な小説だと思います。そして、現在のような危機的状況において「リーダーの振る舞い」がいかに大切かが実感できました。

下のリンクは文庫本版ですが、キンドル版も用意されています。ぜひご一読をオススメします。

※ 医療関係者の尽力と献身的な働きに心から感謝と敬意を表します。

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