火事にあった人と食事会をします。
突然ですが、初対面の3人で食事会をすることになりました。職業も出身も違いますが、なかなかの共通項があります。全員が火事にあっているのです。
きっかけは、このnoteでした。
書きはじめたのは、火事から1週間もたっていない混乱の最中。火事についての情報があまりにないので、何がおきて、何に困り、何が助けになるのかを書き残そうと思いました。あの頃は毎日がジェットコースーターのようで、どんどん忘れてしまうというからこの未曾有の経験を書き残しておかねばと思ったんです。
不特定多数の人に読まれるnoteに書くのは正直、こわかったです。火事だけに炎上リスクも高いかもしれない、なんて冗談を考えつく余裕はまだありませんでした。でもなにか書かなくちゃ、という思いはふくれあがっていきます。
さんざん迷った挙句、信頼できる後輩に相談しました。
阿佐ヶ谷のパール商店街にある上島珈琲店の窓辺の席で、黒糖ミルクコーヒーをすすりながら、歯切れの悪い言葉で、モゴモゴと、切り出しました。
「今回の火事のことをnoteに書いてみようと思うんだけど、どう思う?」
なんでこんな大変な時にそんなことをいいだすのか、と思ったに違いありません。迷惑千万な先輩からの相談に、優しくて聡明な後輩はこんなアドバイスをしてくれました。
「とりあえず書くだけ書いておいたらどうですか。でも公開はしない。しばらくして冷静になってから、公開するかどうかを考えてみたらいいと思います」
たしかに今は自分は冷静ではないかもしれない、全くその通りだなぁと思いなおし、後輩にお礼をいって別れました。そして阿佐ヶ谷パール商店街のラーメン屋さんの2階のAirbnbに戻りました。
その日の夜半、インスタントコーヒーを飲みながらAirbnbのキッチンで文章を書いてみたんです。寒い夜で、家族は寝静まる中、あの日のことを思い出しながら、MacBookのキーボードをパチパチと打ちました。
余談ですが、iPhoneとiPad、そしてMacBookが無事で助かりました。支援してくれる人とのコミュニケーション、Airbnbの予約、ネットバンキングでの支払いなど、必要な作業がサクサクできました。
記事はあっというまに書けました。下書きとして保存しようと思ってました。でもなぜか公開と思い立ったんです。そうなるともはや止められず、なにかにつきうごされるように、記事の公開設定を進め、さらには自分のTwitterに、そしてFacebookに、のせたんです。
この頃は不安で寝られないことがよくありました。惨めな気持ちにもなりました。周囲に火事にあった人はいなかったし、誰もこの気持ちはわからないだろうとも思っていました。
noteを公開すると、すぐにコメントが集まりました。たくさんの温かい言葉、サポートをしてくれる方もいました。そのひとつひとつが心に沁みました。
「自分も火事にあった」という方からかもコメントをいただきました。
Twitterで拝見し読ませていただきました。
ぼくも10年前に住んでいた貸家が放火で全焼しました。近隣にも迷惑をかけてしまい、すべてのものを失いました。(中略)あれから10年して今年はぼくにとって一つの区切りの時と思っていたとき、記事を拝見させていただきました。いままで火事の事は人前で話す事が出来ずにいましたがこの記事を見て勇気をいただきました。
火事は全てを奪います。帰る家もない。先の見通しも立たない。ただ助けてもらう毎日。自尊心がグラグラするんです。 だから同じ経験をした方からのコメントは、何よりの支えでした。同じ経験をしている人がいるってことも助けになるし、こんな自分でも人の役にたてるんだって思えたんですよね。
しばらくしてこのメッセージの主と、FUKKO DESIGNで一緒に活動をしている木村充慶くんとが旧知の中だということを知りました。その人は日本屈指のタップダンサーの村田正樹さんでした。
メッセージのやりとりはたぶん2往復ぐらいしかしていないと思います。でもお会いしたくて木村くんにセッティングをお願いしました。
今回の食事会で初対面するもうひとりとのつながりも木村くんでした。
火事の直後、河瀬さんにも役に立つことがあるかもしれない、あるnoteの記事を教えてくれました。
木村くんの会社の後輩である、下枝弘樹さんが、自分の火事の経験を書いたものでした。火事にあった直後に教えてもらって、貪るように読みました。たくさんの勇気をもらったし、ぼくも書いておけば誰かの役に立つかもしれないって思ったんですよね。
火事から9ヶ月、この2人と食事会をするとこになりました。まだ見ぬ2人、されどぼくの人生を救ってくれた大切な恩人である2人です。
火事なんて災禍が、人との縁をつむぐなんて、おもしろいですよね。
いつか誰かの役に助けになればと思って書きはじめたnoteですが、実は一番助けられているのは、自分自身なのかもしれません。
2人にあったら、ぎゅっと握手をしたい。
そして、心からありがとうっていいたい。
あなたからのサポート、すごくありがたいです。