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燃えた家とチューリップ、そして妻。

 嘘みたいな話ですが、家が火事になりました。それから緊急事態宣言が出たので、この3ヶ月、家族と長い時間を過ごしています。これまでは仕事で家を開けている時間が長かったので、とても貴重な時間だと思っています。

 火事の経緯はこちらのマガジンにまとまっています。


   燃えた家は、今は再建するために、解体されて骨組みだけになっています。仮住まいしてる家からは車で15分程離れているのですが、何かのついでに立ち寄ったりしています。先日も、近くまで行く用事があり、息子を連れて行きました。住み慣れた場所に近づいていくにつれて、息子は思わず「懐かしい」と声をあげました。家族でピクニックをした公園や、ランニングをした川沿いの道、子どもたちが通っていた小中学校...思い出が詰まった風景が車窓を流れ始めると、いつも気持ちがぎゅっとなります。

 燃えた家に到着すると、前庭にチューリップが咲いていました。火事になる前に植えたものです。妻は毎年、秋になるとひとりせっせと球根を植えるのです。それが冬を経て芽吹き、毎年、春になると花を咲かせます。そして僕は会社に出かける朝、ふと花に気づくのです。「あー今年も植えてくれたのか」って思うんです。それは妻との無言の気持ちのやりとりでした。

 少しセンチメンタルな気持ちになり、仮住まいに戻りました。そしてチューリップのことを妻に話しました。するとこう言われました。

 「えっと、球根は毎年ひとりせっせと植えてたのではなくて、もうずっと子どもたちと一緒にやってます。あなたは家にいないから知らなかっただろうけど。それに、チューリップを無言のやりとりと思ってたなんて、全然知らなかったわ。」

 僕の事実誤認と勝手にセンチメンタル。それを2人で笑いました。

 こんな話が出来たのも、火事とチューリップのおかげです。

 

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