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家が火事になりました

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2020年2月10日に家が火事になりました。火事が起きる確率は、0.04%と言われています。でも起きてしまえば100%。突然、大混乱が始まります。何が起きて、何にを感じたか、いつ…
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#エッセイ

家が火事になりました。

人生には時に思いがけないことがおきます。 その朝、僕は仕事仲間とともに、首都高で移動していました。そこに突然、出勤途中の妻から電話がありました。 「我が家が燃えてるらしいの」 「えっ、なに燃えてるって」 「とにかく家が燃えてるの」 最初はなにをいっているのか全くわかりませんでした。でも胸騒ぎを押さえながら自宅に戻ることにしました。すぐに高校3年生の長男と連絡をとりました。家族全員が避難できていることがわかり、一旦はほっとしました。でも息子は興奮した声で最後にこういい

もし火事にあったなら、読んでほしい。

 誰にでもおきる可能性があります。あるサイトによると、住宅火災が起きる確率は、0.024%なんだそうです。確率はあくまで確率。火事の当事者になれば、その瞬間から人生が大転換します。何をしていいのか、まったくわからないほど混乱します。そして、助けになる情報はほとんどありません。だから僕の場合、何がどうだったのかをできる限り具体的に記しておきます。家はほぼ全焼でしたが、近隣への延焼はほぼなく死傷者もありませんでした。不幸中の幸いでした。 この記事を読んでくださった皆さんにお願い

神様がくれた時間。

 毎朝、娘を車で中学校まで送り届ける。家を出るのは7時40分。タイムズカーシェアのカーポートに2人で向かう。その時、娘のリュックを背負うのは僕だ。このリュックが激烈に重い。なぜ荷物が多いのかと聞くと、置き勉するから明日は軽くなるよ、と笑いながら娘はいう。しかし軽くなった試しはない。「パパ、今日もお願いね」とバーベルが詰まっているようなリュックを毎日、渡される。  家が燃えた。2月のことだった。今は少し離れた場所で仮住まいをしている。生活の拠点は移ったのだが、移せないこともあ

いつかあの家に2人を招いたら、きっと泣いてしまう。

 人が火事になる確率は0.024%、それなりにレアな体験です。そして非日常をおくり続ける日々は、さらにレアな体験を呼び寄せます。  火事から半年が過ぎた週末の昼下がり。僕は、東京都写真美術館で森山大道の写真展をみていました。アレハレボケのとんがった白黒写真、どぎつい色が焼き付けられたカラー写真、どれもインパクトがすごくて、どうやったらこんなスナップ撮れるんだろう、と思いながら、被写体たちの過剰な人生に思いを馳せていました。  すると被災地の復興を考える「FUKKO DES