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人生には時に思いがけないことがおきます。 その朝、僕は仕事仲間とともに、首都高で移動していました。そこに突然、出勤途中の妻から電話がありました。 「我が家が燃えてるらしいの」 「えっ、なに燃えてるって」 「とにかく家が燃えてるの」 最初はなにをいっているのか全くわかりませんでした。でも胸騒ぎを押さえながら自宅に戻ることにしました。すぐに高校3年生の長男と連絡をとりました。家族全員が避難できていることがわかり、一旦はほっとしました。でも息子は興奮した声で最後にこういい
1週間前、僕は火事にあいました。その経験を人に伝えたいと、noteで「家が火事になりました」という記事を書きました。 その後、沢山の方から、メッセージをいただきましたのですが、印象に残ったことがあります。「火事にあったことをずっといえずにいた」という方が複数いらっしゃったことでした。放火や延焼など、その方たちはむしろ被害にあった側でした。それでも、なかなか人に言えないのが、火事なのかもしれません。 火事はすべてを奪う、といいます。 僕らの寝室は火が回らなかったの
火事にあって、しばらくは会社を休んで家族のことをすると決めました。 子どもたちと、いつもより沢山の時間を過ごしています。一緒にスマホのゲームをしたり、学校へ送って行ったり、毎日晩ご飯も一緒にたべる。ある意味、神様がくれた休暇だと思っています。 子どもたちと沢山しゃべると、そのまっすぐな感性にほとほと感心する。 一番下の娘は、天真爛漫で、食いしん坊。まわりを和ませてくれる。そんな彼女も、あの時、家の中にいました。結構火が回り始めた頃、なんとか逃げ出せたが、少し煙を
今日は息子のことを書きます。高校3年生で、現在受験まっただ中。彼にとって今回の火事はことさら大きな災難でした。 火事になって3日目の朝。息子が目に涙をためて、こういい放ちました。 「おれはさ、もうがんばってんだよ。なんだよ、がんばれって。これ以上、がんばれないよ」 それを聞いた僕は、父親である自分から幽体離脱するみたいに、この状況を俯瞰してみていました。 「ちょっと今日で3日目。人は極度の緊張にさらされるとしばらくアドレナリンがでる。しかししばらくすると緊張の
人を、人たらしめるものとは一体なんなんでしょうか。食べたり、寝たり、生殖への欲求は動物にもあります。 それは「何かを愛おしむ」ことなのかもしれません。 火事の朝、パジャマで間一髪で逃げ出した小学校6年生と3年生の娘たち。幸いなことに怪我ひとつありませんでした。しかし彼女たちは「日常」のほとんどを失いました。ランドセル、教科書、靴、漫画、コスメ、アクセサリー、すべてが真っ黒な炭になってしまいました。 その日から、家族5人でAirbnbでの生活を余儀なくされました。