忘れることの話。

昨日さよならをして、明日また会うはずだったひとが今日死んだ。とても唐突に。

職場のデイケアでの話である。
私は、介護の仕事に崇高な理想とか献身的な心なんてものはあればよいがなくてもよいという人間で、どちらかと言えば自分は持ち合わせていないと思っている。
デイケアの前には入所施設で働いていたけれど、その時からこの思考はわりあい、ぶれていない。

冷たいなあ、と思わなくはないが、優しさだけで成り立つならば心が死んでいきそうになんてきっとならない。

嫌なことはいくつもあるけれど、私は唐突なお別れがとても嫌だ。
避けられるならば、避けたい。
でも人間は、いつか終わる。そんな場面に立ち会わなくても、昨日会ったひとと明日が会える保証がどこにもないことを、いつもいつもこの仕事は突きつけてくる。

さようなら。
お別れの挨拶が、永遠のお別れになるなんて、考えながら生きていけるほど私は強くない。

……という話を書きかけて、数日寝かせていたら、なにを最後に言いたかったのかわからなくなり、その間に宝塚でのご贔屓の卒業が発表され、3月11日を越えてしまった。
あの日、私はなにを考えていたのだろう?
忘れないために記したいはずが、すっかり忘れてしまっている。

忘却は、ときどきやさしくて、ひどいものだ。

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