毒のように胸を塞ぐけれど、の話。

本を読んでいると、自分に合うか合わないかがわかってくる。
私個人の趣味嗜好とは違うものを読み、これは……違うね、うん……とそっと閉じることもあるし、面白くはないな、と思うこともある。
ジャンルや文体。雰囲気、空気、匂い。
好きか嫌いか、面白いかそうでないか。

単純な話。
だけどそうと割りきれない読書というものに出会うことがある。

本当に生理的に『居心地の悪くなる』類いのものと遭遇してしまう事故も、本を読んでいると起こりうるのだ。これは割と誰しも体験しているのではないだろうか。
何が怖いって、その類いは大概、あらすじや設定だけ見ればこちらの性癖ストライク!で事前回避が難しい上に、やめときゃいいのに読み出したら最後まで引っ張られる引力がすごいのだ。作者の力量の前に怯えながらページを進み続けるよりない。

誰も幸せにならなかったり、退廃的なその後しか想像できない結末だったり、ファンタジーで読んでいたら、ラストでいきなり現代日本でした、みたいな設定のやつ……。『ファンタジィ』やら『サナトリウム』『寄宿舎』エトセトラ。現代が舞台のはずが、選び抜かれし雰囲気でゴリ押ししてくる言葉の羅列。頭が確実に疲れ、心は磨耗していく。

それでも懲りずに、時たまその類いのものを手にする。
かの『犬神家の一族』を何度見ても、結局犯人は一体……?と都合よく忘れているのと似ている気がする。

じわじわ染み込む毒に似たものは、どんよりと重い気持ちを連れてくるけれど、正体は掴めないまま。
私はきっとまた、頭の痛くなる名作と出会うのだろう。
読むことは、楽しくて奇妙だ。

よろしければサポートお願いします。いただいたサポートはインプットに使用させていただきます。色んなものが見たいです。