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介護が敬遠される理由について少し考えた話

「読んだ本の感想をnoteに書いてみませんか」とnoteのエディタ画面で提案されたものだから、最近読んだ本のことを書こうかな、と一瞬心が揺らいだ。その方が何か楽しいのかもしれない。誰が楽しいのかはわからないが。私かな?

迷いはしたが、タイトルを書いていたのでこのまま介護の話を続行することにした。いつもタイトルを考える段になって何にも浮かばずに頭を抱えるのに、今回は割とあっさり決定した。ここから先の内容をそのまま一文に要約したらこうなるので、じゃあもうわかったからいいやと思う方もいるかもしれない。でも付き合って欲しいので、読んでください。

以前、転職するという友人に介護なら求人が多いよ、と話したところ、「それだけは無理!」と言われた。介護職になったことを伝えた時も「よくできるね」と言われた。大抵「自分にはできない」と返される。

他人の排せつ物の処理が無理、というのが主な言い分である。

この点について、言えることがあるならば、排せつ物に対しては慣れる。一週間もあれば特に深く考えなくなる。考えることがあるならば、下着からはみ出しているこれをされどう対応したものかとか、何か血便みたいなのが出てるんだけど大丈夫じゃないよね!?とか、そんな方面になっていくように思う。

でもいくら私が説明しても、これはなかなか伝わらない。端から興味がない人間に興味を持つつもりがない内容を語っても、響かせるのは難しい。私には綾小路きみまろ並の話術はない。

そもそも介護のここが素晴らしいですよ!とプレゼンする気持ちが私にはない。教科書のような、福祉の心に満ち溢れた人間と私は相反するところにいる。就職活動に失敗したから介護業界に飛び込んだ私は、最初から現在に至るまで、崇高な福祉マインドを持ち合わせたためしが無い。

それでも介護職をしているのだから、その仕事が好きなのではないかと言われるし、ハローワークへ職探しへ行っても当然のように介護業界の求人から差し出される。我が業界は万年人員不足である。

元々家庭でしていた介護を、外部に委託したものが介護サービスであるが、家庭でしていたことというのが「誰でもできる」「簡単」な仕事という発想に繋がりやすいし、福祉という言葉が資本主義からはみ出ている印象も受ける。だからなのか、給料は当然のように安い。夜勤に入れば夜勤手当が出るけれど、私は夜勤で精神的に倒れた。

簡単な話、人員を確保したいならば社会的地位を上げて、給料も上げればそこそこ人は集まる。

だけれど、介護職という仕事は、福祉という大枠で見ても軽視されている気がしてならない。介護は肉体労働だけれど、こまごまと事務作業もあるし、レクリエーションも企画しなければならない。私の経験であり、これが一般的な内容かはいまひとつわからないが、利用者のズボンのゴムを入れたりとれたボタンを付けたりと裁縫も家庭科レベルで求められるし、部署によっては料理もする。誕生会では演芸のようなものを披露し、八面六臂の活躍が求められる。それに加えての感情労働。罵声や暴言にも耐えなければならない。

ここまでして、給料は安く、社会からは軽んじられる。

誰にでもできる仕事だから。

いや、ならもっと人が集まるだろう。不景気でも集まらない業種やぞ。

国の偉いひとはどう思っているのかしらないけれど、介護福祉士は国家資格であり制度改正で受験資格がややこしくなった割に、持っていれば給料がとても上がるというものでもない。上限が見えている賃金、やってくる要介護度の高いお客様方。積もる仕事。溜まるストレス。

……そりゃ人も集まらないし、来ても去るわ。

ここまで書いてみて思った。この記事のせいで介護には絶対に関わらないという決意をしてしまった人がいたらどうしよう、と。そこまでの影響力はないと思うし、世の中には介護のすばらしさを書いたコミックエッセイや漫画もたくさんあるし、素敵な経験を語る同業種の方もいらっしゃるから大丈夫だろう。

何でそんなに不平不満と愚痴ばっかり言いながらこいつは介護をしているんだと思われるかもしれない。簡単だ。生活のため。これに尽きる。生きていくにはお金がかかる、と平成狸合戦ぽんぽこでも言っていた。よーく考えよう、お金は大事だよ、と某保険会社のアヒルも言っていた。お金大事。

お金がすべてではないけれど、心の余裕にはお金が必要だ。世の中お金より大切なものがあるという台詞は、ある一定以上の収入があって初めて言えるセリフだし、何か夢や目標ができてもお金がなくて身動きできないなんて普通にあり得る。

色んなものを犠牲にして、対価に賃金を得るのが社会人だとしたら、我々介護職が払う犠牲に見合う報酬は「この程度」だと思われているのだろうか。それならば、何だか悲しいし、そこまで自分を切り売りして安く買いたたかれるならば、他の仕事をした方がいいと考えても不思議ではない。

そんなところが、介護という仕事が敬遠される理由の一端にあるのではないのかな、と思いながら明日も私は全力で走り回る。それこそ道化のように。

……これが今年のnoteで初めての長文記事ってどうなんだろうか。

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