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そこに正義はあるんか?   

2022年の7月下旬、長きに渡る1つの戦いが終わりを告げました。

何の戦いかと申しますと、ある交通事故に関しての加害者と保険会社を相手取った、損害賠償請求の裁判であります。
人生の中で裁判を経験するという事は中々無いので、事の経緯を時系列で書いてみたいと思います。
内容を極めて簡略化して書いていますが、皆様の参考になればと思いますので、宜しくお願い致します。
(尚、今までの記事よりも長文となっていますのでご興味が無ければスルーしてください)


1 家内、追突事故に遭う(2019年2月)

確かその日は仕事だったと記憶していますが、携帯のLINEに家内から事故に遭ったという一報が入ります。
「バスに乗っていたら、後ろから自動車に追突された。バスが動けず代わりのバスが来るまで待っている」みたいな内容でした。

一報を受けて、取り敢えず命に別状はないと安堵した一方、公共機関で事故に遭遇するとは運の悪い奴だなとも思いました。

警察の事故処理やら代車のバスが来るのが手間取るやらで結局、家内は警察による事情聴衆の後にバス会社の別の乗用車で自宅まで送って貰ったらしいですが、他の乗客の人は警察に事情を説明した後に三々五々散ってしまったそうです。

家内は衝突した衝撃で左肩を打ちつけていたらしく、後にそれが原因となる頑強な痺れと左手の握力低下によって裁判を起こす事になりますが、この時は裁判のさの字も頭にありませんでした。
(因みに相手方はノーブレーキでバスに追突していたそうです)

2 弁護士に依頼(2019年8月)

事故に遭ったら、とにかく病院で調べてもらう事は皆様周知の常識だと思いますが、家内の症状を聞くと長引きそうな気配もあったので、早急に家内に近くの病院に通院する事と肩と首のMRIを撮ってもらう事を伝えて、後の事に備えました。

最初は家内と保険会社との関係は良好だった様に思います。しかし時間が経過してくると保険会社からの対応も少しずつ変わってくるみたいで、早く打ち切ろうとしたいのが見え見えになっていきます。
まぁ保険会社も営利企業である以上、仕方がないのですが。

家内と保険会社の関係が悪くなっていた丁度その時期は、その時に住んでいたアパートが老朽化を理由に取り壊しが決定して強制退去の憂き目にあった時期と重なり、かなりてんやわんやした記憶があります。

退去に伴う引っ越し費用や入居費用に関する補償についての話し合いを不動産会社の担当者と家主の弁護士と交えて交渉したのですが、後にその時の事が縁で家内の事故に関する全ての事を件の弁護士に依頼する事になります。

人との縁というものは誠に面白いものです。

3 後遺障害の不認定と訴訟準備 (2020年3月)

家内の通院は途中病院が変わっても続き、それと平行して整骨院にも通うようになります。
事故に遭ってから約8ヶ月後に症状固定となってからも、病院と整骨院の通院に明け暮れます。
症状固定になればその後の通院費は全て自腹となる為に今日までの長い間、先の見えぬ出費に耐える事になります。

弁護士の協力の元、病院の紹介で更に大きい大学病院で精密検査をしてもらうのと同時に家内の症状は後遺障害14級9項「局部に神経症状を残すもの」に該当する可能性があるので、後遺障害の申請を弁護士を通じて自賠責損害調査事務所に提出しました。

大学病院の専門医がその時の診断書に記載した傷病名は「胸郭出口症候群」(以下、TOS)。
初めて聞く名称でした。
TOSとは、ざっくり言うと腕を上げる際に神経や血管が圧迫されることにより、手がしびれたり、力が入りにくくなったりする病気です。

TOSは「外傷性」と「非外傷性」に分けられ、現代医学では決め手となる検査方法が見つかっていません。この事がTOSを発症しているのかどうかを第3者に判断させる事をより困難にしています。


提出してから何ヵ月かが経過して弁護士の所に届いた通知は「不認定」。理由は一部陽性だったものの、主要な精密検査が陰性だった事によるものでした。
しかしながら、家内の左手の痺れと握力低下は改善する気配がありません。

今後の方針として弁護士から提示された方法は2つ。

再申請するか、訴訟を起こすか。

弁護士との話し合いの結果、全てを白黒はっきり決着をつけるという意味で訴訟を選択したのです。
(「むち打ち」では訴訟を起こしても100%負けるらしく、「TOSならば裁判をやる価値はある」という心強いお言葉を担当弁護士から頂いた事から訴訟に踏み切りました)

4 地方裁判所第一審判決(2021年10月)

2020年の8月頃に相手方に訴状を送付したのを皮切りに、約1年ぐらいかけて原告、被告双方からの書面での応酬が始まります。
担当弁護士は「空中戦」と表現されていましたが、裁判所を通じて双方の言い分や主張に対しての反論を書面にて戦わせていくのです。

そして、双方の争点が絞り込まれた時期を見計らって裁判所は「当事者尋問」を実施する事を弁護士を通じて通達して来ます。
実際事故に遭った本人を法廷に呼び出して裁判官の前で双方の弁護士からの質疑応答をするというもので、家内にとっては誠に試練であった事は想像に難くないと思います。

その当事者尋問が終わって審理を終了(結審)したのが2021年の7月下旬で判決は10月上旬だったと記憶しています。
(結審の後に裁判所から「和解」を申し込まれる事もあるらしいですが、今回は「判決」という判断でした)

そして、判決。判決の翌日に弁護士から一報を受けて、その翌日に判決文が送付されました。

主な判決内容は
「事故が原因でTOS発症を認めるも後遺障害認定には至らず」でした。

判決文の詳細は省略しますが、担当弁護士との話し合いにより、判決を不服として控訴する事にしました。

5 無念の控訴取り下げ(2022年7月)

控訴の理由は只1つ。
一審判決に書かれていた「TOSは時間が経過すれば収束する」という点に対する疑問でした。

ならば、どのくらい経過すれば収束するのか?
長い時間、局部に神経症状を残しているのならば、それは後遺障害と言えるのではないか?

それが此方側の言い分でした。

2021年11月から始まった控訴審という名の延長戦は相手側も同時に控訴した事もあり、又も書面でのやり取りが行われます。

事態が大きく動いたのは今年の5月頃の控訴審で、相手方の弁護士から「大学病院の専門医は当初、TOSを否定していた」とし、その証拠になる病院内でやり取りしている書類を提示してきました。
最初に後遺障害申請における診断書よりも前に書かれていた内部文書です。

事実を再確認をする為に担当弁護士は裁判所を通じて質問書を専門医に送付する事で、改めて家内のTOS発症は事実かどうかを明らかにしようとしました。

何度か件の専門医には診察して頂いていたので、否定する事はしないだろうと思っていましたが、当初下した判断を覆したくないのか「今回の事故とTOS発症の明確な因果関係を否定する」という驚愕の返答を出してきたのです。

専門医に明確に否定されれば、それを覆すのは困難となる事は素人の私でも理解出来ます。
担当弁護士は専門医の回答に対する「弾劾書面」を出して弁護しますが、最後まで争うと一審判決が覆る危険性もあり、弁護士との話し合いの末、無念の控訴取り下げを決めました。

事故発生から3年以上経過して、ようやく1つの決着をみた訳ですが、この場を借りて改めて病院、裁判等でお世話になった全ての人に感謝の意を表したいと思います。

しかしながら、未だに症状が改善しない家内を見ていると、某クレジット会社のキャッチコピーが頭をよぎり、ポツリと呟いてしまいます。

「そこに正義はあるんか?」と。


6 まとめ

今回の裁判を含めた一連の事柄について感じた事を書きますと

①後遺障害認定を受けるには、第三者が見て誰でも納得出来る状況でなければならないと言う事です。
判定基準に置いて詳細は不明ですが、極端な話、人体の一部が事故によって喪失する、若しくは主要な精密検査で陽性になる等の判断が認定の最低条件であると仮定すると、自覚症状でしかない「痺れ」という曖昧模糊な症状では未来永劫認定されないのが現状ではないでしょうか?
何の為に後遺障害14級9項「局部に神経症状を残すもの」という項目が存在するのか、今持ってよく分かりません。

前にも書きましたが、現代医学に置いて症状の決め手が存在しないTOSはむち打ち同様、後遺障害認定を受ける事がほぼ不可能という事を今回の裁判で明らかになった様な気がします。
(過去の判例ではTOSによる後遺障害を認定しているものもありますが、かなり少ないと思います)

②例え過失割合が争われない100%の被害事故であったにせよ、裁判に置いては様々な方向から争われる可能性があるという事です。

今回のケースだと

*追突された衝撃は本当に酷いものだったのか?

*TOSだと言っているが、事故との因果関係はあるのか?元々姿勢が悪かったのだから事故の前からTOSだったのではないか?

*バスに乗っていた乗客の中で「痺れ」を訴えてるのは貴女だけだが、何故か?

*「痺れ」と言っているが本当に日常生活に支障をきたすものなのか?

…………等々、細かく挙げればキリが無いくらい相手側の弁護士から異議を申し立てられました。まるで此方の言い分が「全てに置いてゴネているだけなのでは?」と言いたげな雰囲気です。
流石に当事者尋問の時は家内に対して相手側の弁護士は辛辣な尋問はしてきませんでしたが、担当弁護士の話だと過失割合を争う裁判の時はかなり辛辣な尋問があるらしいです。

③今回最も教訓として感じたのは、事故に遭ったら迅速に弁護士に連絡する必要性です。
もし最初から弁護士に全てを任せていたら、最終的な結果は変わっていたかも知れません。

今回は残念な結果にはなりましたが、これを縁に弁護士の方と知り合えた事は今後にとってもプラスになったのかと思います。
未来の予測など誰も出来ない以上、何かあった時の為に普段から連絡すべき弁護士の人を見つけて置く事を皆様にも強く推奨したいです。


以上、ダラダラと長文・駄文を書き連ねましたが、皆様にとって今後の何かのヒントになればと思います。

最後までお読み頂き有り難うございました。

最後までお読み頂き有り難うございました。 いつも拙い頭で暗中模索し、徒手空拳で書いています。皆様からのご意見・ご感想を頂けると嬉しいです。