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働き方の変化と守破離

政治哲学者ハンナ・アーレントは、働くを「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」に分類。活動が望ましい姿と思われがちだし、僕自身もそう考えていましたが、NEC未来創造会議の発言録を読み返していたところ、労働(labor)にも軽視してはいけない価値があると気づかされました。

働き方の変化

政治哲学者ハンナ・アーレントは、働くを「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」に分類。労働(labor)→仕事(work)→活動(action)と昇華するものと考えていました。

活動(action)は働き方でなく、生き方そのもの。僕自身が心がけている公私混合(Work Life Integration)。なので、労働(labor)を軽視してしまっていたのですが、NEC未来創造会議の発言録を読み返していたところ、ハッと気づかされました。

林千晶氏:
私が大好きなハンナ・アーレントが書いた『人間の条件』という本の中で、人間の活動を「労働」と「仕事」と「活動」と言っているんです。英語だと「labor」「work」「action」。人間が得意ではなく苦しいと感じる作業は、どんどんロボットやAIが進んでやって、そのことを誰も「なぜ俺の仕事を奪ったんだ」とは思わない。今「やらされている」と感じる労働はAIにどんどんやってもらえるようになってくるし、有用性のためにやる仕事──今は労働者はほとんどいなくて、仕事さえもきっと減ってきていますが──「活動」は働くということではなく生きることであり、「活動」の条件は、自分がこれは大切だと思うことに人を巻き込むことで、自分ひとりではできないと書いてあります。
塩沼亮潤氏:
私たちはまず、自分自身がどう生きていったらいいのか、この悩みから、自分自身の悩みから根本的に解放されるためには一体どうしたらいいのかと、同じことを同じように繰り返して悟りを得るわけです。ただ、このルーティーンをこなしただけでは悟れなません。やはり日々、今日より明日、明日より明後日という可能性に挑戦していかない人は悟れないです。
10人あるいは100人が「用意ドン!」で一緒に修行しました。100人が100人とも仕上がりが一緒かというと、全然違います。その中で、本当にその境地に達する人は、何千人、何万人に一人という割合なんです。やはり自分で納得して、あの人は会っていて気持ちいいなとか、また会いたいなというお坊さんには人が集まるだろうし、そこでアイデアを皆さんに提供できるし。私たちは好きなように生きさせてもらっていますが、アートの部分も実はありますね。
藤沢久美氏:
そういう意味では、働くということを林さんがハンナ・アーレントの言葉で3つに分けてくださいました。labor、work、action。今の塩沼さんのお話だと、このlaborの中にも、もしかしたら喜びや自己成長の場が生まれてくるかもしれないと示唆していただいた気がして、あらためて「働く」も多様になっていくということなのかしら

労働(labor)というルーチンワークにも意味がある。ここで思い浮かんだのが「守破離」でした。

守破離

守破離
剣道や茶道などで、修業における段階を示したもの。「守」は、師や流派の教え、型、技を忠実に守り、確実に身につける段階。「破」は、他の師や流派の教えについても考え、良いものを取り入れ、心技を発展させる段階。「離」は、一つの流派から離れ、独自の新しいものを生み出し確立させる段階。
『デジタル大辞泉』より

労働(labor)はルーチンワークで型を覚える「守」、
仕事(work)は与えられたタスクの中で新しい価値を生み出す「破」、
活動(action)は働くいう枠を超えて生きると融合させる「破」。

華道や茶道、剣道、武道など、日本人が大切にしてきた「道」(プロセス)。労働(labor)で基礎能力を習得して、仕事(work)・活動(action)で応用力を発揮する。奴隷のように労働(labor)だけに終始する働き方は共感できませんが、労働を経験した先にある仕事や活動がより意味を増すということ。逆に、活動(action)だけに終始しても、労働・仕事・活動の全てを経験したことで得られることとの差が大きいと考えます。

つまり、労働・仕事・労働は二項対立ではなく、三位一体であるということ。

守破離という「道」

上記とは別のNEC未来創造会議での塩沼亮潤氏の言葉。

塩沼亮潤氏:
わたしはお坊さんなので選択肢がふたつしかないのです。ひとつが簡単に早く行ける道。もうひとつは遠回りで面倒くさい道。後者で繰り返し挑戦していることによって見えない人間力みたいなものが育ってくるのだけど、前者ばかり進むと育たない。

遠回りで面倒くさい道を、繰り返し挑戦することで育まれる人間力。ロボットやAI(人工知能)の発達によってルーチンワークを代替するという風潮が支配的ですが、時にはルーチンワークを取り戻してみることも大切なのではないでしょうか?

オマケ

政治哲学者ハンナ・アーレントは、働くを「労働(labor)」「仕事(work)」「活動(action)」と分類しましたが、僕が好きな分類は「労働(labor)」「仕事(work)」「遊ぶ(play)」です。遊ぶように働く。働くように遊ぶ。

そして、オススメの一冊『生きるように働く』(著:ナカムラケンタ)。


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