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嘘グルメ 第九話「猪の鼻の輪切り」

おお!すまねえな。お兄さんが東京から来るって言うから、おつかいなんか頼んじまった。東京なんか行くことねえからさ、すまねえな。おお…..これが「乃が美」の高級「生」食パンか…!!おおっ!こだわりジャムセットも!!いやぁ、テレビとかでずっと見ててよ、ずっと食べてみたかったんだ…と、東京の人は毎朝これ食ってんだろ?いいよなぁ…。あ、開けてみていいかい?よし、開けるぞ?…っ!?こ、これが「乃が美」の食パン…!!まず驚くのが見た目の綺麗さだ…。生娘の肌のようにしっとりとして、それでいてスベスベしてるのが見ただけで分かる。鼻を近付けなくても、ほんのりと漂ってくる良質な小麦だけに許された芳醇な香り!このまま部屋に置いて芳香剤にしたいぐらいだ…!もう我慢できねえ!焼いたりせずにまずはそのままカブリと…!!!はうっ!一口噛んだ瞬間に目の前が輝きだす…!しっとりもちもちの食感が運んでくるこの幸福感はなんだ!!あまりの感動にうっすら涙目になってやがらぁ…。よし、次はこれにこだわりジャムセットを!まずはマーマレードからいきますか!…え?あ!すまねえすまねえ!取材だったな!パンのうまさにすっかり忘れちまってたわ(笑)

…ああ、俺は猪専門の猟師だ。他の獲物には目もくれねえ。いま住んでるここは二年になるが、そろそろ引っ越さなきゃならねえよ。もうここらへんの猪は俺が山に一歩入っただけで逃げやがるのよ(笑)そんな調子でもう引っ越しの繰り返しよ。それで猪を捕まえられるのかって?簡単だよ。もうあいつらは俺の臭いを覚えてやがる。山の麓に一日履いた俺の下着を置いとくんだわ。あいつらは直線にしか走らねえから反対側に真っ直ぐ逃げやがるんだわ。そこを軽トラで先回りしておく。俺の臭いが漏れないように新しい服を着て軽トラに乗ったまま、窓を少し開け銃口を出す。そしてちょうど猪が直線上に逃げてきた所をズドンよ。そんでありがたく大地の恵みとしていただくって訳だ。ん?猪の何がそれだけ惹き付けるのかだって?それはお前…他の獲物よりも断然うめえからだよ。まあ、乃が美の食パンには負けるけどな(笑)

いいかい?猪を捕まえたら絞めて皮をはいで内臓を取る。苦労して取った肉は牡丹鍋なんかにすると最高なんだけど、ホントに美味いのは鼻なんだよ。ああそうだ。鼻そのものがうめえから調理法はシンプルでいい。まず鼻を切って輪切りにしてフライパンで焼く。鼻肉を両面しっかり焼いてポッカレモンを多めに注いで、そのまま口に放り込んでみろ。…これがうめえのよ(笑)

男が山に足を踏み入れると、その山の猪が全て逃げ出すという伝説の男は、乃が美の食パンにめっぽう弱い男だった…。

「猪の鼻の輪切りステーキ」

材料(2人分)

猪の鼻の輪切り 4切れ

オリーブオイル 小さじ2

ポッカレモン お好みで

作り方

1 猪の鼻を2.5cmの厚さに輪切りする。

2 フライパンにオリーブオイル小さじ1を全体に広げ、輪切りを並べて強火で両面を美味しそうな焼き色がつくまで焼く。

3 焼き色がついたら、ポッカレモンを多目にぶっかける。火を切って、お皿に盛ったら完成。

コツ・ポイント

焼くだけでとっても簡単!
でもしっかり美味しい☆肉!っていう感じ♪
猪の油があるので、ソースをかけるならさっぱりしたのが良さそう。付け合わせで野菜をつけるのもgood♪

※本文に出てくる料理は、嘘です。

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