千葉 格 報道写真展[BACK-GROUND](文=細江克弥)
2020年1月24日~2月6日まで「FUJIFILM SQUARE @六本木」で開催された写真展の内容をこちらに再掲します。
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長谷部誠の海外挑戦は、2008年1月、ドイツ中北部の工業都市ヴォルフスブルクから始まった。
寒くて寂しい街だ。とても。ドイツの冬はハンパじゃなく寒いが、スタジアムと、それからフォルクスワーゲンの工場しかないこの街は、ひときわ寒いと訪れるたびに感じる。たぶん気のせいじゃない。
四角いデザインのスタジアム。3万人の歌声を響かせる。
もしもこの“ホーム”で温まることができなかったなら、長谷部はきっとこの寒くて寂しいヴォルフスブルクの街で6年半もの時間を過ごせなかったに違いない。
2011.2.4 Wolfsburg vs. Borussia MG
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たとえピッチに立たなくても、たとえ下品な野次を飛ばすだけでも、“12番目の選手”は多いほうがいい。
世界中どこへでも大挙して押しかけるフランクフルトのサポーターは、この日も躊躇なく、背番号12を身にまとって決戦の地ベルリンへと向かった。
肩を組み、拳を突き上げ、スマホで写真を撮りながら応援歌『Hey Eintracht Frankfurt』を高らかに歌う。相手は王者バイエルン。フランクフルトにとって、勝てば30年ぶりのタイトルとなる大一番だった。
チームの中核として素晴らしいパフォーマンスを披露した長谷部誠は、一夜明けて翌日、レーマー広場を埋め尽くしたサポーターの姿を動画に収めてInstagramにアップした。
「Eintrachtサポーターは最高だよ!」
勝っても、負けても――。
“12番目の選手”は絶対に移籍しない。また次の30年も、彼らは『Hey Eintracht Frankfurt』を高らかに歌う。
2018.5.19 Bayern vs. Frankfurt
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精彩を欠いたエースに敗因を押しつけられるほど、サッカーは単純じゃない。
何をいまさら。当たり前のことだ。サッカーを愛する者なら誰だって知っている。なのになぜ、信じた勝利を手に入れられなかった人々は叫び続けるのだろう。
「なぜゴールを決めない」
「なぜもっと走らない」
「お前のせいで負けた」
サッカーは単純じゃない。精彩を欠いたエースに敗因を押しつけることなんて、できるわけがない。
もちろん、彼らも知っている。でも、だからこそ叫び続ける。
「お前のせいだ」と、泣きながら。
2014.7.14 Germany vs. Argentina
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1年間、苦しんで、苦しんで、その末につかみ取った古豪シュトゥットガルトの1部昇格だった。
試合終了の笛が鳴る。6万人の歓喜が爆発する。スタジアムが揺れる。
たった一人でもサポーターが駆け出せば、急加速するカオスをもう誰も止められない。ピッチはあっという間に人で埋め尽くされ、危険を察した選手たちは隔離エリアに身を潜めた。
「つまらねえこと、やってんじゃねえ」
背中でそう言いながら、アレクサンドル・マキシムはベンチの屋根によじ登った。左手に拳。右手にスマホ。その両方を高く突き上げて、何度も何度も、言葉にならない声を発した。
この瞬間の光景は、この瞬間にしかない。
あの日、あの瞬間の光景は、彼の記憶とスマホの中に。
2017.5.21 Stuttgart vs. Wurzburg
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ダヴィデ・ザッパコスタ――。
思わず声に出したくなるリズミカルな名前の持ち主は、いかにもイタリア人らしく、なんとも主張の強い顔立ちをしている。
サッカーの世界に、イングランドで成功したイタリア人選手はわずかしかいない。過去に何人もの名手がこの舞台に立ったが、そのほとんどが失敗し、中にはその後のキャリアを狂わせた者さえいた。
しかし、彼もまたロンドンへ向かった。
新天地はチェルシーFC。前年の国内王者だ。出番を待ち続けること1カ月。ついに迎えたデビュー戦で豪快なロングシュートを突き刺すと、サポーターが狂喜するスタンドに走った。
俺たちイタリア人が、イングランドで成功できないはずがない。そうだろ? フットボールに国境なんてないんだ! ――そんな心の叫びに続いたのは、きっと、思わず声に出したくなるリズミカルな名前だったに違いない。
「俺がダヴィデ・ザッパコスタだ!」
フットボールに国境はない。けれど、イタリア人がイングランドで成功するのはなぜかとても難しい。
頭頂部は薄くても、この時まだ25歳。
あれから2年。彼は今、イタリアにいる。
2017.9.12 Chelsea vs. Qarabag
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サッカーは、進化しすぎてしまった。
より戦術的に。より組織的に。11人の集団行動は少しでも乱れればそこを突かれ、相手の乱れを見つけてそこを突かなければ勝ち残れない。
勝利をもたらすのは選手か。それとも監督か。あまりにも愚問だ。くだらない。監督に決まっている。だからこうなった。
当代一の指揮官と評されるジョゼップ・グアルディオラは、サッカーを進化させ、変えてしまった張本人の一人だ。
そのジェスチャーで、言葉で、表情で、背中で、それからとびきりの情熱で――。彼の現役時代に輝いた「たった1人で勝たせる選手」は、たぶんもう2度と現れない。
けれど、サッカーは進化した。間違いなく。
2015.10.7 Bremen vs. Bayern
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左はロッベン。背番号10。元オランダ代表のドリブラーは、主戦場とする右サイドから中央に切り込み、強烈な左足でゴールを狙う。
右はリベリー。背番号7。元フランス代表の同じくドリブラーは、爆発的なスピードで敵陣を突破し、決定的なチャンスを演出する。
どちらかといえば、どちらもスーパースターの性分じゃない。若い頃から奔放で我が強く、「トラブルメーカー」のレッテルを貼られたこともあった。
そんな2人が、ドイツの絶対王者バイエルンでコンビを組むこと10年。ロッカールームで殴り合ったこともあるが、ピッチに立てばいくつものゴールを生み、いくつもの勝利を味わい、そのたびにニヒルな笑みを浮かべて互いに肩を組んだ。
2人合わせて、愛称「ロベリー」。一方の引退ともう一方の移籍による“解散”を迎えるにあたって、激情家のくせにどこまでもシャイなリベリーがtwitterに綴った。
「ありがとう。俺たちは史上最高のコンビだ」
2013.8.9 Bayern vs. Borussia MG
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ドルトムントの本拠地「ジグナル・イドゥナ・パルク」は、とんでもないスタジアムである。
最大収容人数8万1365人にして、2018-19シーズンの1試合平均観客動員数は8万841人。もちろん世界1位。人口60万人にも満たないこの街で年間チケットは5万5000席も売れ、しかも継続販売率が毎年99%を超えるというから常軌を逸した熱狂ぶりが伝わってくる。
キックオフ直前の選手入場時だけピッチで大旗が振られるのは、古くからのしきたりだ。
その向こうに見える”立ち見限定”のゴール裏スタンドには、なんと2万5000人ものサポーターが陣取っている。チャンスのたびに叫び、ゴールのたびに歌い、勝利のたびに飛び跳ねるアイツらの威勢は、もはや普通じゃない。狂っている、とさえ思うこともある。
被写体としての魅力は、そりゃあ素晴らしい。だから初めてこのスタジアムを訪れたカメラマンは、吸い寄せられるようにしてあのエリアに足を踏み入れてしまう。
チャンスのたび、ゴールのたび、勝利のたびに頭上から降り注ぐ黄金色のビールによって、何より大切なレンズを破壊されてしまうことを知らずに。
2015.9.27 Dortmund vs. Darmstadt
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51億円という巨額の移籍金は、支払ったトッテナムにとって当時のクラブレコードだった。待望の初ゴールが生まれたのは加入から3カ月後のこと。エリック・ラメラは天を仰いだ。
“ウクライナの矢”アンドリー・シェフチェンコは、大会終了後の現役引退を表明していた。2012年欧州選手権。スウェーデンとの開幕戦。彼は2つのゴールを記録し、チームを逆転勝利に導いた。
ラメラにとって「最初」の、シェフチェンコにとって「最後」のゴールだ。しかし21歳の新鋭は静かに安堵を漂わせ、35歳の練者はまるで子どものように飛び跳ねた。
ゴールには個性がある。どちらも同じ1点に過ぎないけれど。
2013.11.7 Tottenham vs. Sheriff2012.6.11 Ukraine vs. Sweden
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競り合う相手より少しでも高く跳ぶため。
ボールをめぐる身体のぶつけ合いに負けないため。
スピーディかつ正確なスローで攻撃に貢献するため。
1対1で対峙する相手を自由にプレーさせないため。
予測不能なフォームからキックを繰り出し、相手の意表を突くため。
サッカー選手は、足でも頭でも、もちろん腕でもなく、背中でプレーしている。写真を撮っていると、そんな瞬間によく遭遇する。
2016.6.25 Switzerland vs. Poland
2016.5.3 Bayern vs. Atletico Madrid
2015.9.26 Mainz vs. Bayern
2013.11.6 Chelsea vs. Schalke
2014.7.1 Argentina vs. Switzerland
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アイツらは、いつでもどこでもボールを蹴っている――。
そんな偏見さえ持たれる“王国”ブラジルだから、国民の認識は「優勝だけが正義」で一致している。
2014年ワールドカップ。64年ぶりの自国開催。優勝からは3大会も遠ざかっているけれど、とにかく今回はメンバーがいい。前評判もすこぶるいい。高まりすぎた気運と高ぶりすぎた感情は、迎えた開幕戦の国歌斉唱で涙する選手の姿に表れていた。
ただしその涙は、底なしの不安の裏返しでもあった。
前半11分。失点。まさかのオウンゴール。ただならぬ絶望感が押し寄せてくる。
不安を吹き飛ばしたのは、エースナンバーを背負う千両役者だ。前半29分。同点ゴール。後半23分。逆転ゴール。たった1人で目の前の世界を変えてしまった彼は、カメラマンが予測したとおりのエリアに走り、芝に膝を落として両手を突き上げた。
まるで絵に描いたような、理想的なオープニングゲームだった。王国にとっても、エースにとっても、カメラマンにとっても。
2014.6.12 Brazil vs. Croatia
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あの理想的なオープニングゲームから1カ月、“王国”はいたって順調に計画を進めていた。
頂点まであと2つ。相手はドイツ。相変わらず涙混じりの国歌斉唱を終えると、手を叩き、抱き合い、上着を脱ぎ捨てて前後2列に並んだ。
彼らの目の前には、世界中から駆けつけたカメラマンの人垣がある。その向こうには、相変わらず「優勝だけが正義」と信じる2億人のブラジリアンがいる。
1カ月前にあった不安の塊は、どこかに吹き飛んでいた。国歌斉唱の涙の裏返しには、もう何もなかった。肩を組んでカカトを上げる4番と9番と23番の“背伸び”は、決して強がりではなく自信の表れだった。
もちろん、まだ誰も知らない。目を凝らすと6人の背中にはっきりと浮かび上がってくる王国の威信が、90分後に起きるあの悲劇によってズタズタに切り裂かれることを。
2014.7.8 Brazil vs. Germany
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2010年7月、内田篤人はドイツに渡った。
2010年11月、僕もドイツに渡った。
それから数カ月後に撮ったこの写真は、選手の背中と、そこにじんわりと浮かび上がる感情と、さらにそのバックグラウンドに魅せられるきっかけとなった1枚だ。
内田篤人という選手がいなければ、フォトグラファーとしての今の自分は存在しなかった。
2012.3.11 Schalke vs. Hamburger SV
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シャルケとドルトムントは、中学校の“社会”で習う「ルール工業地帯」に本拠地を構える。
いずれもドイツ屈指の強豪クラブにして、隔てる距離はわずか20キロ。だから両者が対戦する「ルール・ダービー」は、世界有数の熱戦として広く知られている。
この日、シャルケは憎きドルトムントを圧倒した。2-0の完勝だった。
さて、試合終了直後のゴール裏とその熱狂を収めたこの1枚の主役は、果たして誰だろうか。
攻守に貢献した18番カリジューリか、強烈なフリーキックで勝負を決める2点目を奪ったスキンヘッドの29番ナウドか、それとも、半裸で叫ぶサポーターの群れか。
意外とセンシティブでロマンチストな撮影者が言った。
「シャルケの22番が、内田篤人じゃない。そういう写真です」
2018.4.15 Schalke vs Dortmund
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背が急に伸び始めたのは15歳の時。身体が小さいことを理由に所属クラブにクビを宣告されてから、わずか1カ月後のことだった。
「見返してやる」と意気込んだはいいが、急すぎる成長で身体のあちこちが痛く、練習どころの騒ぎじゃなかった。なんだかんだで8カ月。1度もボールを蹴れなかったというから笑えない。
泣く泣くサッカーをあきらめ、医療用器具の製作工場に勤務することなんと8年。流れ作業の歯車となり、ズシリと重い原料を1日に何百回も超高熱オーブンに運び続けた。
誘われてセミプロクラブに加入したものの、繰り出した街で仲間を救うべく“正義の暴力”を働き、それが原因で逮捕されたこともある。やはり笑えない。
ところが5年後、ジェイミー・ヴァーディの時代は突如として到来する。
プレミアリーグ制覇。年間MVP。年俸は6億5000万円にまで跳ね上がり、3億円の豪邸を建てて3000万円のベントレーを愛車にした。アマチュアリーグのいつかのエースが、ワールドカップの舞台に立つイングランド代表の一員である。それはそれで、逆に笑えない。
ずっと笑えなかったストーリーの果て、彼はウインクをしてニヤリと微笑み、そして小さく親指を立てた。
「ウェイトトレーニング? ああ、このあいだ飲んだ『レッドブル』がそれにあたるかな」
2017.4.18 Leicester vs. Atletico Madrid
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選手、客、芝、ゴール、スタジアム、スタンド、大型ビジョン。
主役、脇役、敵、単なるファン、熱狂的なサポーター、アンチ、それから数え切れないほどの顔。
ついでにカメラマン、ボランティアスタッフ、運営スタッフ、その他のスタッフ、など、など、など――。
唯一「チームメイト」がどこにも見当たらないけれど、それでもアルゼンチンの背番号10は、角度なき角度からドリブルを仕掛ける。
成功すればヒーロー。失敗すれば戦犯。
スタジアムを舞台とする物語において「リオネル・メッシ」ほど恐ろしい配役は、たぶんない。
2014.7.1 Argentina vs. Switzerland
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欧州王者を決するUEFAチャンピオンズリーグは、サッカー界における最上級のターゲットである。クラブも選手もこの舞台にすべての力を注ぐからこそ、勝利の熱狂に天井はなく、敗北の落胆に底はない。
そのせいか、この舞台では「奇跡」がよく起こる。
奇跡のくせにあまりにも頻繁に起こるものだから、半世紀以上もの歴史を重ねた今となっては、人々が当たり前にその御出ましを信じるようになった。
2018-19シーズン決勝トーナメント1回戦。イタリア王者ユヴェントスは第1戦を0-2で落としながら、続く第2戦を3-0で制する大逆転劇を演じた。
ゴール裏に並ぶ表情は喜びに満ちている。「マンマミーア!」と驚嘆する顔は、どこにも見当たらない。
欧州王座の奪還を目論むこと四半世紀。国内8連覇中のイタリア王者は、信じさえすれば、奇跡が“よく起こる”ことを知っている。
何度敗れても挑み続けられる理由は、たぶん、そこにある。
2019.3.12 Juventus vs. Atletico Madrid
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「え? 僕自身がゴールできなかったら? うーん、どうかな。その試合で全力を尽くことさえできれば、家に帰った時に満足感を得られるよ」
いや、たぶん、それは、嘘だ。
2014.10.12 Luxembourg vs. Spain
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目の前に“一生に一度の光景”が広がっているとして、その瞬間、人は何を思うだろう。
ワールドカップのトロフィーを掲げるドイツ代表の輪。その最後方に、伸ばした腕が色白く、控えめなポジショニングで喜びを分かち合う背番号17がいる。
ペア・メルテザッカー。198cmの大型センターバックは、わずか19歳でドイツ代表にデビューし、その後10年間で104試合に出場した。誰がどう見ても最高のキャリアである。
しかしこの至福の瞬間から4年後の2018年、現役引退を決断した彼は秘めてきた苦悩を吐露した。
「試合前はいつも吐きそうになる。息ができなくなって、涙が溢れてくるんだ。若い頃は、朝から何度もトイレに駆け込んだよ」
想像を絶するプレッシャーがある。それを吹き飛ばす“一生に一度の光景”がある。自分の目で、心で、そのどちらにも触れることができたから言える。
「それでもきっと、また同じ道を選ぶよ。試合前に嘔吐して、ケガで20回ものリハビリをしなければならないとしても。サッカー選手として手に入れた思い出には、それだけの価値があるからね」
2014.7.13 Germany vs. Argentina
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バイエルンの本拠地「アリアンツ・アレーナ」に行くと、いつも必ずこのポジションに陣を張る。
ここにはなぜか、広告看板がない。寝転ぶようにして地面スレスレに構えれば、暗くて黒い写真を撮ることができる。
コーナーキックを任される選手は“いい選手”が多い。“いい選手”は、姿勢がいい。胸を張る。だから、背番号がキレイに映る。
いつもカッコよく写ってくれるフランク・リベリーの後ろ姿が、僕は好きだ。
2016.3.12 Bayern vs. Bremen
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アディショナルタイム6分。
試合を決める3点目を奪ったガチノヴィッチは、ユニフォームを脱ぎ捨ててゴール裏に走った。
チームメイトは追った。ベンチ入りした控え選手も、それからスタッフも、我を忘れてガチノヴィッチを追った。スタジアムのテンションは最高潮に達し、収拾がつかないと判断したレフェリーはそのまま試合を終わらせた。
長谷部誠は追わなかった。
ピッチに膝をつき、強く拳を握って「よし」とつぶやく。フランクフルトにとって30年ぶりのタイトル。その中心にいた長谷部のパフォーマンスを現地紙『ビルト』は「驚異的」と評し、めったに見ない最高点「1」をつけた。
「年齢を重ねて34歳になったけれど、自分に対する“違和感”がまったくない。むしろ、これまでに積んできた経験を根拠とする自信は、とてもいい状態にある気がします」
ユニフォームを日の丸に着替えてキャプテンマークを巻き、男はロシアに向かった。日本代表として臨む最後の大舞台を、一切の疑いも違和感もない最高の状態で迎えられる。その幸運を噛み締めながら。
2018.5.19 Bayern vs. Frankfurt
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日本で生まれ、バルセロナで育った久保建英の“リスタート”。レアル・マドリードをプロローグとする新たなストーリーが、ついに動き始めた。
オフィシャルショップに並んだ“数字のないユニフォーム”が意味するのは、「並べておけば売れる1枚」か、それとも「いつか付加価値がつくレアな1枚」か。もちろん後者であることを証明するために、3日後の8月22日、「KUBO」はマジョルカ行きの飛行機に乗ることになる――。
なーんて、枝葉末節のストーリーを作り上げて勝手にガヤガヤと盛り上がっている大人たちを尻目に、18歳の“久保くん”はグイグイと我が道を行く。
その速度も道順も行き先も、はたまた意味も意義も価値も誰も知らない。誰かが決めた「たどるべきストーリー」なんて、あるわけがないんだ。
2019.8.19 Madrid
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