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この期に及んでツイッターが好きだ

この期に及んで、ツイッターが好きだ。

2012年。まだフォロワーが300人かそこらのころ。終電の小田急線が人身事故に遭い、帰り道を失った。あてもなくツイートで嘆いたら、「正義のヒーローをやってみたかった」と、見知らぬ男性がエゴサーチで僕のつぶやきを見つけて、車で迎えに来てくれた。

小田急線の人身事故から生じたSNSとリアルの連動の一例。|ITじゃなくても楽しい86世代ライフ

SNSとリアルが連動することに、えらく感動した。まるでアニメ作品みたいに、画面の“向こう側”と“こっち側”はつながっているのだと、ひどく興奮した。


2011年。ツイッターのアイコンを描くことで生計を立てている人を見かけた。当時、大企業の総務部にいて、お金を儲ける仕組みもわからなかった僕にとっては、かなりインパクトのある生き方だった。SNSは、人ひとりの人生くらい、軽く変える力を持っていることを知った。

2014年。タイムラインは選挙の度に「投票に行け」と騒いだ。声を大にして、政治に参加することの意味を説いた。大いに盛り上がって、これだけ広がれば投票率もちょっとはマシになるだろうと思った。結果、投票率は過去最低レベルを叩きだした。SNSは、社会を変えるほどの力は、到底持ち合わせていないことを知った。

SNSじゃ世の中は変えられない。

2004年。彼とは17歳のときに、高校のゼミで一緒になった。当時、彼は演劇部の部長を務めていて、「台本を作るのにも、文章力は必要だ」と、作文に関するゼミに通う理由を説明してくれた。

僕は彼の書く文章と、彼の演じる劇が好きだった。ほかの趣味嗜好は何ひとつ合わないが、彼の演劇に対する姿勢だけは、尊敬していた。なにより、ひとつのことに熱中できる高校生活を送っていることが、羨ましかった。

妹の部活のコーチが高校の同級生だった。 たまたま入った高円寺のまぜそばやさんが高校の同級生の店だった。 他の人のツイートみてたらリツイートされてた人気ライターが高校の同級生だった。 そんな僕は今週作演出している舞台の本番です。

https://twitter.com/chabsiki/status/752429585489235969

2016年7月。そんな彼の手元に、拡散された僕の140文字が届いた。

実に12年ぶりの接触だった。彼は僕のツイートを引用するかたちで、現状報告を載せた電波を発信した。画面越しに、12年ぶりの再会を果たす。彼は29歳になっても、演劇を続けていた。自分で台本を書き、演出を手がけ、舞台を作り続けていた。

2016年7月15日。画面越しの再会を果たした4日後、彼の劇を見に行った。小さなハコだった。平日昼間なだけあって、空席もあった。

すばらしい劇だった。演者の唾がかかるほどの距離で、圧倒的な熱量の芝居を見て震えた。「文章を書きたい」と思うほどだった。素晴らしい表現は、表現を連鎖させると、再認識した。

こころ震える表現について

2016年7月15日15時50分。「ひさしぶりだ」。彼と僕は、照れながらそう言った。12年の歳月が流れ、僕らの顔はやつれ、うっすらと髭を作り、すっかり大人になってしまった。

でも、少し話をすれば、すぐ当時の僕らに戻れた。

「ツイッターを見たよ。すごい活躍しているみたいじゃないか」

「そう見えるだけだよ。いくらでも作れる、140文字なんかじゃ」

僕らはその140文字で、再会することができた。画面の“こっち側”と“向こう側”は、今日もつながっていることが証明された。

時を超えて、友に届く。

僕はそんなツイッターが、この期に及んで好きだ。

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売文家。広告記事、取材記事、コラム、エッセイ、Web小説などを書いています

コメント2件

さすがTwitterの王子様です(*˘︶˘*).。.:*♡
素敵なお話ですね(^O^)
1日の終わりに気持ちが温かくなりました☆
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