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スタートアップの社長になって2年間でやった失敗ワースト5を発表します


こんにちは。ユニフィニティーという会社の代表をやっていますかつらと申します。

今日は、社長として仕事をしてきたこの2年間の失敗を思い切って書いてみようと思っています。

こういう話は本来、それこそユニクロの柳井さんの「一勝九敗」のように、それなりに成功者になってから書籍化したりするべきものなのではないかとは思いつつも、失敗を繰り返さず、ここを転機にするためにも言語化は有効と思いました。

また、成功した人が昔を振り返りながら語る、ある程度美化された「失敗」だけでなく、傷口がまだばっくり開いた状態で言語化されたライブ感のあるただの失敗というのも、険しいスタートアップ道にこれから踏み出そうとしている人や界隈を楽しく見物したい人からの需要があるのではないかと思い、オープンな場所に上げることにしました。怒られたら消します。悪しからずご了承ください。

第5位:社員のやる気を過剰に気にする

いきなり共感しづらい微妙にセンシティブな話からはじまりますが、思うにやる気というのは何かの原因ではなくて結果だという話です。つまり、やる気があるから業績が良くなるというわけではなくて、お客さんがたくさんいて、価値を提供できていて、社会と嚙み合っている感じがするからそこで働く人がやる気で満ちるわけです。

もちろん、やる気がなくていいというわけではありません。むしろ逆です。みんなやる気はあるわけです。普通に。わざわざスタートアップを立ち上げたり選んだりしているわけです。やる気がないはずがない。やる気はある。頑張ってもいる。それでもなかなかいい結果が出ないのです。そんなことはざらにあります。

じゃあどうするかですが、ここでやる気をさらにもう20%高めようみたいになると話がおかしくなっていく気がします。なぜならそんなことは無理だからです。やる気を増やすのが無理なのになんとか増やさないといけないと日々思っていると、だんだんすこしでも人のやる気が減るのを食い止めるマインドになってきます。

そうしてついには社員のやる気を削がないかどうかが意思決定の基準になってくると、かなり危険信号だと思います。何となく八方美人的な、スタートアップらしからぬ戦略・意思決定が横行し、業績は一層停滞します。社長というのは、ゴールを決める人です。周囲の顔色ではなく、未来を見るべきです。

第4位:いきなりスケールしようとする

なぜ社員のやる気を気にしてしまうのかと言うと、要するにパフォーマンスが十分に発揮されていない社員がいるからで、なぜパフォーマンスが発揮されていないかというと、それはやる気がないからではなく人員が過剰だからです。

やはりスタートアップをはじめたからには、素早くグロースしてスケールしたいです。これはもうスタートアップ経営者の本能と言っていいでしょう。従ってスタートアップの経営者には、悉く、ちょっとした偶然のいたずらを神の啓示と思い込みすぐにアクセルを踏み込もうとする癖があるところとなります。

アクセルの踏み方にも種類がありますが、もっとも各方面にインパクトが大きいのが人の採用です。雇われる方にも生活がありますから、雇った方はきちんと末永く給料を払っていかなければなりません。当然のことです。一方で、こちらもよく考えれば当然のことなのですが、雇っただけでバリバリ金を稼ぐエコノミックアニマルみたいな人は、誰かに雇われるより自分でバリバリ金を稼いだ方が得なので、普通は人に雇われません。

つまり、人を雇ったときに増えるのは売上ではなく費用だということです。なので順序として正しいのは、売り上げを増やすために人を増やす、ではなく、増えた仕事をこなすために人に手伝ってもらう、であるべきということです。この至極当たり前の原則を胸に刻むべきでした。

当社にも、私がおかしなタイミングでお招きしてしまったが故に、結果的にお別れせざるを得なくなってしまった人たちがいました。本当に申し訳ないことをしたと思っています。

第3位:ターゲットを絞らずあらゆる人に売ろうとする

間違えたタイミングでうっかりアクセルを踏んでしまう原因のひとつが、ちゃんとターゲットを絞っていないことです。

スタートアップにとっての最初のゴールは、売れる商品ができあがることです。そのためには、売れる商品が何で、それが一体誰に売れるのかを、まず何よりも先に決めることが必要です。このゴールを定めないと、ゴールまでの距離がまず分からないですし、何かしらの行動によってどのくらいゴールまでの距離が近づいたかも分からないので、行動の成果も見えません。

実は世の中、スタートアップの経営者をうっかり勘違いさせるための罠で溢れています。面談でプロダクトを紹介すれば絶対に褒められますし、IT系メディアの取材に応じたり目新しい感じのタイトルでプレスリリースを出せば結構な人がサイトにやってきます。アライアンスを持ちかけられたり、なかにはプロダクトを買ってくれる人もでてきます。

しかし、こういうことに惑わされてはいけないのです。どんな甘言で誘われようが、自分たちが考えたような人が、自分たちが考えたような用途でプロダクトを使い、自分たちが考えたような効果を得ているのか、ただこれだけをチェックすべきです。

当然思いもしなかった用途で思いもしなかった効果を得る顧客も出るでしょう。その時は考えの方を変えてもいいのです。ただ考えを変えたらもう一度上にあげた検証が必要です。そうです。めんどくさいです。ただ、非常に重要なことです。自分たちの考えは正しい。それは実際に検証された。そう確信できるまでアクセルは踏むべきではないのです。

当社にもそういう時期がありました。大口の契約がいくつか決まり、売上がガツンと伸びました。アドレナリンが出て、アクセルを結構踏みました。ただ、一瞬立ち止まって考えるべきだったと今でも思うのは、それは狙って取れたのか、次も狙って取れるのか、です。

第2位:限定的な意見をもとにプロダクトの改善を続ける

やはり書いていてだんだん辛くなってきましたが、良薬は口に苦しということだと思って続けます。

ターゲットをきちんと絞って仮説を立てないと変なタイミングでうっかりアクセルを踏んでしまうのですが、ここでひとつ疑問が湧くと思います。そもそもターゲットが曖昧なのに、なぜ売るもの(プロダクト)があるのでしょうか。答えは、なんとなくの思い込みでつくったしまった、です。

なんとなくこんなものがあったらすごいじゃんという妄想がまずあります。ここまではまったく問題ありません。コードをかけるあなたが試しに妄想をかたちにしたとします。素晴らしいことです。出来上がったものを眺めていると、ここはもう少しこうしたいなという欲がでてきます。だんだん風向きがおかしくなってきます。いろいろと手を加えているうちに当初のアイデアがなぜか確信に変わっていきます。ここが分水嶺です。

われわれがスタートアップでつくるべきは世界にただひとつの芸術作品ではなく、多くの顧客の課題を解決するためのプロダクトです。そのために、「これは本当に多くの顧客が欲しがるのか」という疑いを常に持たなくてはなりませんし、その疑いを晴らすための手段は、「実際に多くの顧客が欲しがっている」という事実であるべきで、プロダクトに自分が満足しているかどうかは関係ないということです。

リンクトイン創業者のリードホフマンは言いました。「最初のプロダクトを世に出した時に“恥ずかしい気持ち”が湧いてこなければ、そのローンチのタイミングは遅過ぎたと考えるべきである」と。そういうことです。

遅すぎるとどうなるか。軌道修正が非常に難しくなります。ひとつ機能をつくりこむごとに、やっぱりこのコンセプトちょっと違うなとなったときの引き返せなさがn乗になります。スタートアップの製品は細かく軌道修正しながらマーケットにアジャストさせていくのが王道であり、過ぎたつくりこみやアドホックな機能追加は、軌道修正が必要になった際にはただの負債にかわります。なるべく負債を最小化して身軽さを保つ努力こそが必要でした。

第1位:自分で営業しない

おそらく書き終わると同時に私はどこかの穴に入って死ぬと思いますが、結局はこれに尽きます。

スタートアップの経営者は、常に顧客と接し、生きたマーケット感覚を養い、製品開発チームに対して的確なフィードバックをし続けなければなりません。

昨日の顧客から聞いたことと今日の顧客から聞くことは間違いなく違いますから、結果的に自分の意見もコロコロ変わるでしょう。しかしそれでいいのです。意見をコロコロ変えながら自分のアイデアとマーケットとの接点を探り、さらにそのマーケットの奥行や面積を突き止めに行き、思ったより奥行きがなさそうであればすぐに引き返す判断をする。これがスタートアップにとってもっとも重要な仕事です。そしてそんな仕事、経営者にしかできようがありません。

そしてもうひとつ、経営者が営業をしなくてはならない理由があります。それは、売らないと黒字にならないということです。

ユニクロの柳井さん曰く、経営者とは約束した成果をきちんと上げる人、つまり成し遂げる人のことです。すべての株式会社にとって、赤字は成果たり得ません。赤字が続けば会社はいつか必ず潰れてしまうからです。赤字は犯罪だと思うことです。犯罪者ではなくなる方法がたったひとつだけあります。それが売ることです。

頑張って売りましょう。頑張って売っていれば、上の4つの問題はたぶんなんとかなります。これからスタートアップをやる人、頑張ってください。私もまだまだ頑張ります。

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