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あなたの代わりに、ふるさとを巡る。

「代わりに写真を撮ってきてもらえないでしょうか?」

一通のメールが届いた。直接お会いしたことはないけれど、SNS上でいつも投稿を見てくださっている方からのご依頼であった。

ほどなくして、わたしは富山県黒部市にいた。

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黒部市の旧市役所はモダンな造りが美しく、かつては街のシンボルだった。「旧」と書いたように、今では新しい市役所が利用されていて、旧市役所は任務を終えて静かに佇んでいる。

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(旧黒部市役所黒部庁舎)

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旧市役所は、依頼者さんのお母さまが長くお勤めになっていた場所だった。黒部市で生まれ育ち、この土地で長く働き、測ることのできない無数の思い出が詰まっていることは、頂いたメールからも確かであった。

10月半ば、旧市役所は解体されることになった。依頼者さんのご家族は今、黒部市には住んでいない。お母さまのご年齢や依頼者さんのお仕事上、解体工事が始まる日までに、訪れることは難しいと。

そこで、「旧市役所の写真を代わりに撮ってきてほしい」というお話を頂いたのであった。旧市役所だけでなく、黒部市内やお母さまの名残のある場所、近郊の街並みも巡りながら。

全て一人行動なので、例の感染症については、ご容赦願いたい。

「あなたの代わりに、ふるさとを巡る」旅であった。

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旧市役所の他にも、いろいろと巡った。

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「この場所も、誰かのふるさとなんだ。」かつて、市町村一周の旅をしながらこのような思いは持っていたけれど、「誰か」という言葉の範囲が広くて、見えない誰かを探すような気持ちだった。
今回、黒部市を巡りながら、依頼者さんとお母さまの顔が何度もよぎった。会ったことはない。顔も分からないのに、今までの「誰か」より存在がずっと近かった。

市町村一周の旅は、こういうことだったんだ。写真を撮りながら、目の前の静かな光景から会話が聞こえてくる。「きっと、この道を歩いていたのかな。」と、不思議と見えてくる。一緒に追体験するように、わたしは旅をした。

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誰かにとってはなんの変哲もない景色も、誰かにとっては大切な景色かもしれない。北海道のトウモロコシ畑も、渋谷のスクランブル交差点も、黒部市の街並みも、マンションも、団地も、川も、海も。目の前の景色をもっと、大切にしたい。旧市役所は、きっともう解体工事が始まって、あの日の姿には戻らないだろう。

訪れた日。太平洋側で続いていた長雨を、立山連峰は切り裂くようにして、黒部市では雨が降らなかった。

ポカリスエットを買います。銭湯に入ります。元気になって、写真を撮ります。たくさん汗をかいて、ほっと笑顔になれる経験をみなさんと共有したいと思います。