夜寝る時、お腹の上に黄土色のフォックスが寝そべってる想像をする

どこからか、いつの間にか、フォックスは、いる。

 夜に、ベッドに寝っ転がって、上を向いて、天井を見る。 天井は今日も面白くないから、目を閉じる。空気を、鼻からいっぱい、吸う。部屋の空気が、鼻からいっぱい、僕の中に入って、部屋が少し、小さくなる。吸った空気を、口からいっぱい、吐く。部屋は元の大きさに、戻る。目を開ける。半分だけ、半分くらい、目を開けて、見る。フォックスはいる。どこからか、いつの間にか、フォックスはいる。フォックスは黄土色で、ここに、僕のお腹の上に、こっちに、僕に、顔を向けて、寝そべって、フォックスは、寝てる。

 とんがった口が、僕の、胸の、真ん中の骨に乗っかって、寝てる。とんがった口の先の、黒い鼻の、鼻の穴から、フォックスの息が、ふよふよ、僕の首のとこに、あごのとこにも、ふよふよ、かかる。
 ばふばふ、僕の、右の太ももと、僕の、左の太ももの間で、ばふばふ、大きいしっぽが、揺れる。フォックスのしっぽの、毛は、中くらいの大きさの、犬の、毛、くらいの太さがあって、ばふばふ、だけど、ざぎざぎ、も、する。フォックスは寝てる。寝てるのに、しっぽは、ばふばふ、動く、ざぎざぎ、揺れる。

 フォックスは、右にちょっととか、左にちょっととか、もにょもにょ、動いたり、もにょもにょ、動かなかったり、する。動いても、だいたいは、ほとんどは、また真ん中に、僕の、胸の、真ん中の骨にのとこに、戻る。
 フォックスの手が伸びてきて、僕の、口の、脇のとこにタッチしたり、する。僕はフォックスの手を、ふんふん、手の匂いを、ふんふん、かぐ。フォックスの手は、じゃがいも、みたいな、じゃがいもじゃない、みたいな、匂いがする。

 機嫌が悪い、時もたまに、フォックスは、ある。そんな時は、僕のお腹の上に、さかさに、あっちに、僕の足の方、に、顔を向けて、寝そべって、フォックスは寝てる。フォックスのしっぽが、ばふばふで、ざぎざぎの、しっぽが僕の鼻を、しょかしょかするし、僕の口を、はっくはっくする。するから、僕は、困る。

 僕のお股に、とんがった口を乗せる。僕に、乗せてもいいかと聞くこともなしに。僕の、右の太ももか、左の太ももの、好きな方を咬む。僕に、咬んでいいかと聞くこともなしに。だから僕も、フォックスのしっぽを、咬む。フォックスは寝たまま、こっちに、僕に、顔だけを向けて、空気を、鼻からいっぱい吸って、空気を、口からいっぱい、吐く。僕も、空気を、鼻から、いっぱい吸って、空気を、口からいっぱい、吐く。部屋の空気が上に、いく。下に、いく。部屋が少し、小さくなる。少し、大きくなる。部屋の、カーテンの奥の、窓の向こうの、道路のわきの、木のてっぺんの、その上の、空は、空気がいっぱいで、空気の先に、葉っぱは、のる。空気の中で、鳥は、泳ぐ。空気の上に、雲は、浮かぶ。空気よりもっと上で、上の方で、月は、光って、星は、見えない。見えないけど、ある。


 朝起きると、お腹の上に、フォックスは、いない。だってもう、とっくに、遊びに行ったのだ。


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