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お祈りメールの裏側にある採用担当者の心理

就職活動の中で、必ずと言っていいほど目にするもの。

「お祈りメール」

なんということはない、不採用通知のことだ。

特に、複数の企業に同時応募する新卒における就職活動であれば、一通もお祈りメールを受け取ったことが無いほどの猛者はほとんどいないのではなかろうか。


そんなお祈りメールについて、興味深い記事を見た。

ざっくり要約すると、不採用とした候補者を他企業とマッチングさせるためのサービスを提供している企業の紹介がされている記事。

私が興味を惹かれたのは、記事の中で不採用通知を送る人事担当者の心情に触れていたところだ。

実際に、私もかつて採用担当として、何万通という不採用通知を送ってきた。ちなみに、不採用通知なんてものは、出来れば送らずに済むにこしたことはないので、数の多さは何の自慢にもならない。

というのは、ベストな採用を考えたとき、
例えば10人を採用したいときに、10人のナイスな候補者がいて、10人とも採用することが出来れば、これほど効率のいいことは無いからだ。
このケースだと、1通も不採用通知を送ることは無い。

不採用通知を送ること ≒ ミスマッチした候補者を集めている という意味になる。

基本的に不採用通知というのは、何かしらの条件が当てはまらなかった候補者に送る。
もちろん、能力や知識が基準を満たしていなかったという場合もあれば、自社の風土や性質に合致しないというケースもある。或いは、全て基準に合致していたものの、他に優秀な候補者がいたというケースもある。

いずれにしても、必要十分ではない母集団形成をした結果、候補者に送るのが不採用通知というわけだ。


では、そんな不採用通知を送る時に、どのような心情で送っているのか。


これは、ケースバイケースで異なる。(という玉虫色の答え)

例えば、一度に同一職種で大量採用する場合などは、候補者のボリュームも大きくなるので、システマチックにプロセスを進めることが多い。
書類選考なんかも、いくつかの合否基準を明確に決めておき、それに合致すれば合格、合致しなければ不合格と機械的に振り分けていく。
この場合、不採用通知もシステムから一括送信となる。非情なようだけれど、そこに特別な感情が挟まれる余地は少ない。


では、特別な感情・・・・・をもって不採用通知を送るときは、どのような場合か。

ケースとしては少ないけれど、泣く泣く不採用の連絡をする場合がある。

例えば、採用活動を行っている最中に、計画変更やプロジェクト凍結などにより、採用活動を中止する場合がある。これは、スピードの速いベンチャーや外資系では珍しいことではない。
そんな時に限って、素晴らしい候補者が選考プロセスに進んでいたりすることがある。大抵は、ビジネス(現場)側から「早く採用してくれ」だとか「もっといい候補者を集めてくれ」だとか、さんざんせっつかれた後にやっと見つかった候補者だったりする。

そんなときに採用中止となると、本当に泣く泣く不採用通知を送らなければならない。
計画変更さえなければ、採用となっていたかもしれない候補者なので、将来的に違う職種でのご縁があるかもしれない。そんな淡い期待をもちながら、連絡をする。時には、直接お電話や面談などで状況をご説明することもある。


他に特別な感情を持つとすれば、自分自身が面接を行い、合格と判断した上で、次の選考プロセスに進めている場合だろうか。

選考プロセス途中の評価には2種類の合格がある。

絶対に採用したい合格と、他の面接官の意見を聞いたうえで判断したいので、いったん合格 という2つだ。

他の人の意見を聞きたい場合というのは、明確な強み(合格にする理由)と、大きめの懸念材料の両方がある候補者という場合が多い。
こういった候補者の場合、現場側からNoを出されても、納得はしやすい。

しかし、絶対に採用したいと思って出した合格者に他の面接官からNoが出された場合は、残念に感じることもある。
もちろん採否会議の場で、それぞれの意見を共有しながら議論をした上で、最終判断を行うのだけれど、それでも自分が推していた候補者が不合格となるのは、残念なものだ。

もちろん、議論に完全に納得した上で、最終判断に至ることもあれば、そうでないこともある。
状況はさておき、自分が納得しきれていない上で送る不合格通知ほど切ないものは無い。

しかし、そんな時だからといって、不採用通知の文言を個別にアレンジすることは少ない。大抵は、事前に用意していたテンプレートを用いる。
個別に文面を作成するというのは、本当にレアだ。

「自分はあなたのことを推してたんですけどねー、残念です。今後の活躍を心からお祈りします。」
なんて連絡をもらったとて、候補者心理とすれば「推してたんなら何とかしてよ。気を持たせるんじゃないよ」というところだろう。

メールの文言によって、不採用となった後もなお、その企業のファンでいるか、アンチになるかが変わってくるだろう ーーそう感じる方もいるかもしれない。確かにその通りだと思う。
しかし、メール一通の影響力よりも、面接だったり選考プロセスを通じでで直接受けた印象の方がよっぽど影響は大きい。

あと少しだけ本音をこぼすと、実務的に、不合格者全員に対し個別の文面を作成するほどのパワーは割けないし、プロセスが属人化してしまい、ミスの原因になってしまうことを考えると、リスク&ベネフィットのバランスが悪すぎるのである。



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本日はお祈りメールの裏側にある採用担当者だった私の心理について書いてみました。

他の企業の採用担当者の方はどうでしょうか。
もし完全に個別で文言を作成しているという担当の方がいらっしゃれば、ぜひそのノウハウをお伺いしてみたいものです。








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