等価交換
誰のことも愛せないのに、自分だけは愛してほしいだなんて、そんな虫の良い話があるだろうか。
それでも私は愛してほしい。
呼吸をするように、朝日に目を細めるように、風にさらわれる前髪のように、真昼の月に目を凝らすように、夜明けの暗闇に溶け込むように。
愛してほしい。
愛してくれないと、愛せないのだ。愛してもらわなければ、愛し方がわからない。残念なことに、私はそんなに、賢くも強くも優しくも器用でもないのだ。
どこまでだったら許されるのか。何をやったら許されるのか。私は何かを許されたいのか。そうか、私はずっと何かを許されたい、許可されたい、誰かのその声を待っているのか。
私は私を許すことができない。
いつだって誰かがいてほしい。たった一人で良い。愛も希望も光も闇も悲しみも苦しみも幸せも、私の持てる全て注ぎ込むから、それと同等のものを私に注ぎ込んでほしい。
ゴポゴポともがく水の中では、全ての物音がスローモーション。痛みにさえも鈍感で、目の前を染める赤で初めて知る傷。たとえ多くの水に希釈されたとしても、私から流れ出した血液は確かにそこに存在し続ける。
無かったことになんてするものか。
絶対に、無かったことになど、するものか。
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