言の葉

わたしが滋賀の祖父に逢いに行った時のメモだ。


(自分にとっての、その時の気持ちの覚え書きとしています。内容が長いです。)





タクシーの運転手さんに、会いに行く人は元気なの?と聞かれて、改めて余命2週間ということの重さを感じた。
涙を堪えるのがつらかった。言葉がでてこなかった。

祖父のいる場所は終身介護施設。そこへ向かう人たちは元気な人もいれば病を患っている人もいる。タクシーの運転手さんはそういう家族をたくさん見てきたと言っていた。
それは辛いなぁって 言ってくれた。
一人で心細いのでとても支えになった。


ケアレジデンスへ。
玄関口には、お寺さんのお靴や礼服に合わせるくつがたくさんならぶ。これもまた辛い、、。

遠くでお経が聞こえる。

辛い という言葉以外浮かばない。


ここで祖父に逢いました。


祖父の状況は父から写真などで見ていたので心の準備はできていた。
目は開かない。返事はたまに、うー‥と言ってくれた。

たくさん手を握って話した。
見守り、話しかけるしか出来ない自分が歯がゆい。

なんでもっと早く逢いに行かなかったかな。
この部屋は綺麗だけど、一人では寂しかっただろうな。(24時間看護の方がいてくれるけれど、一人にベタ付きではもちろん無いので‥)
わたしは今まで祖父に何もしてあげられなかった。

日帰り予定だったが、もう少し祖父と居たかったので急遽泊まることに。

隣の棟が家族の宿泊も対応してくれる。

最後にきたのは祖母のお葬式だ。

ゲストルームの横を通る。
数年前、かつてここでわたしも元気だった祖父母と親戚らと懐石を食べた場所。

入居者の方々がカラオケで楽しんでいた。歌声が聞こえた。

宿泊の部屋を探していると、少し先に暗がりの中歩いてくる女性が。

「宿泊の方?」「そうです。」「カラオケに行くの?」「あ、いえ、部屋はこのへんかなぁと探していました。」「カラオケにいまからいくの。よかったらお待ちしてるわね」といって過ぎていった。

せっかくのご縁なのでこの女性のご厚意に‥と頭をよぎったが、、そんな心の余裕はない。でも見ず知らずのわたしに声をかけてくれたことはとても暖かかった。


疲れたのか、珍しく23時前には寝てしまった。


午前中に祖父に逢いに行く。点滴をしてくれた先生ともお話をしたが、
「辛いですね」といわれるとどうにも辛くて。


祖父の手を握り。

写真家として頑張ってるよ
もう31歳だけど結婚もしてないよ
ひ孫見せられなくてごめんね
ここ10年くらい見た目あんまり変わってないよ
この部屋はなんだかちょっとさみしいね
もっと遊びにくれば良かったね

涙をこらえながら話しても、溢れてしまう。






ここまでがメモ。





言葉というのは普段気軽に出るけれど
とても強い想いをのせるとものすごい強い力をもつ。
時にその力に負けそうになり、口から発することができなくなってしまう。


それでも相手に伝える ということはとても大事なこと。

泣くのをこらえながらたくさん話した。






昨夜夜遅くに一度帰宅したが、
夜中に祖父が息をひきとってしまった。

いまは家族で新幹線の中。


最後に会った親族はわたしだった。
帰らないでそのまま宿泊し続ければよかった。

「一旦帰るよ、またすぐ来るからね」と行ってバイバイをした時

布団に隠れていた祖父の左手が力弱く出てきた。
それを見てわたしは電車を2本遅らせた。




後ろ髪引かれる思いで部屋を出たが
あのまま泊まっていたら看取れただろうか。


でもわたしは、このまま居続けて死を待つようで耐えられない気持ちもあった。

一度帰り、気持ちを整えて容態が急変したらかけつけよう。


そう思っての帰宅だった。




まさか、その8時間後に息をひきとってしまうとは‥。





おじいちゃんに寂しい思いをさせてしまった。


でも、最後にしっかり手を握って、話して。それは良かったとも思う。




後悔はたくさん残るし、でも今から悔やんでも次に同じ過ちを繰り返さない他ない。

わたしにとって最後の祖父母。




写真もプリントして持って行った。
見られないけれど、写真の説明をして、プリントを手に当て、話した。

写真のおかげで、わたしは数少ない祖父との思い出を蘇らせることができたし、家族との思い出も深くできている。



残すための思い出としての写真はとても心が温かくなると痛感しました。





コミュニケーションの大切さも今回身をもって体感した。自分を感じて、返してくれることの尊さ。
生きていることの喜び。

動けることの幸せ。



生きること全てを当たり前に感じている自分に改めて考えるきっかけでした。


おじいちゃんは色々なことを教えてくれたように思う。

ありがとうも言えた。








おじいちゃんと最期のお別れをしてきます。




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