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血肉無くとも

「六道を明かす」──その理念により森有礼を筆頭に明六社が誕生し、研究の道程でアジア初の機械人形が生まれたのである。
──日本絡繰大全より

「カラクリ風情がァ!」

筋肉達磨の鉈をかわし、僕は達磨の腹へ肘を押し当てる。轟音。パイルバンカーが肉を抉り、背後の痩せぎすの頭も砕く。豪奢な客間は脳漿と臓物に彩られ、鉄杭の装填音がこだました。僕は慎重に廊下を過ぎ、書斎の扉を蹴り開ける。男が机越しにこちらを見る。それは間違いなく西周、僕を造った魔術師だった。僕は肘の狙いを定め問う。

「イブはどこだ。」

西は全てを悟ったように哄笑した。

「勝てば教えてやる。私は中村ほど簡単に殺れんぞ、零。」

ぶちぶち。皮膚や腱が破れ、西の中から四間もの百足が姿を現した。無数の足が壁中を蠢く。こちらの残りの燃料は半分。無駄に消耗すればイブに会う前に停止してしまう。やれるか?否、やるんだ。彼女を探すために。

百足の牙が首元へ迫った。

(続く)

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