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ダンス・ダンス・デモリッション

 臓腑がぶら下がる森を全力で駆け抜ける。ひっきりなしにダフトパンクの『Harder Better Faster Stronger 地獄Remix』が脳を叩く。
 また魔法陣が光った。奴らだ。俺は筋肉を弾き、ステップを踏む。単眼の猿が掴みかかろうとしたまま爆ぜた。すかさず撒き散る脳片でスライドしながら、フォーのポッピング。
 喧しい咆哮。
 ミミズとトラクターの合成生物が噴血した。血を浴びた獣が煙をあげ溶解する。悪魔たちは感動すると死ぬよう設計されていた。
 ここは地獄。
 死骸をすり抜け、城を目指す。


 ◯

「サタンが代替わりしました」
 Yeux tremblants決勝。もぬけの殻となったベルシーアリーナに放送が響く。あまりのことに俺たちが言えるのは一つだけだった。
「誰に?」
 すると、声はこう返した。
「Boogaloo Gです」
 笑うしかない。彼はポップダンスの元祖にして神。ダンサーで知らない奴はいなかった。
 それが地獄の王だって?
「彼は2on2を望んでおります」
「断ったら?」とフォー。
 断末魔の大合唱が耳をつんざく。声には俺の娘とフォーの妹が混ざっていた。
「15,000の魂が城で待っております」
 声が奇妙な歪みを帯びると、闇が包んだ。
 眼前には【EXIT】の扉……ではなく、【666】が赤く光っていた。
「66時間後に」

 ◯


 岩場は腸や頭蓋のグロ砦と化した。目の前には"M"と"r"を組み合わせた無機物。感動もクソもない。
 フォーは片足を切り刻まれるし最悪だ。

 ♪Harder, better, faster, stronger

 音に嵌めて体にウェーブを通すが、爆ぜない。
「CK!」
 相棒が俺を呼ぶ。頭上に"M"が降ってくる。
 死を確信した瞬間、血肉が降り注ぐ。
 赤いズートスーツの黒人が立っていた。この背中は。小さい頃テレビで見たままの姿。
「Boogaloo G!」
「ノンノンノ!」
 男が振り返る。金歯の髑髏ががぱっ、と嗤った。
「フェイスtoフェェイス……」

【続く】

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