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刀や刀装具の楽しみ方の変化

刀には刀の魅力が沢山あり、刀装具には刀装具の魅力が沢山ある。

で言えば、初心者の頃は見たままの形をそのまま受け取っているように感じたが(例えばなんか大きく反っているなとか、真っすぐな刃文で刃が明るいなとか)、慣れてくると地鉄にも目が行くようになり、肌の様子なども目に入ってくるようになる。
更に慣れると短くされた大摺り上げの刀の元の姿を想像出来るようになったり、映りを捉えられるようになってくる。
すると製作時代やどの流派の刀工が作った作かが、段々と頭の中で想像出来るようになってくる。
それが実際に合っているかどうかは別として、大体この辺りから本格的な沼入りで刀が更に楽しくなる。
更に進むと茎にも目が行くようになり(自然な茎か後世にそれともいじられた茎かなど)、繕いなどについても気になりだしてくる。
そして実は茎を一番先に見るべきでは無いかと思う程に茎が大事だと気付いたりもする。
それ以降はどうなるかまだ分からないが、とにかく刀身を見て作者候補が頭の中に思い浮かぶようになってから刀が格段に楽しくなった。


刀装具
で言えば、最初は刀と同じように見たままの情報をそのまま受け取り綺麗だなと感じていた。絵を見た時の感覚に近い気がする。
中でも私は鐔が好みで、当初は例えば明治の夏雄や石黒の作などを見ると細部にまで至るその繊細さに心を奪われた。
刀装具は鐔の他にも小柄や笄、縁頭、目貫など様々であるが、やはり大きなスペースに絵画の様にデッサンされた「鐔」は刀装具の中でも一番受け取れる情報が多い事からも初心者受けし易いのではないかと感じる。

そして色々な刀装具を見て行く中で、段々と簡素に見える造りをした昔の鐔や、桃山頃の華やかな芸術が華開く時代の物にも興味が出てきた。
平和な時代(とは言っても職人は生きていく為に必死だったのだろうが)と、戦が多く明日どうなるか分からないという時代での刀装具。
今になって思えばそれぞれから感じ取れる事が違うのは当たり前であり、それぞれが魅力となっている。
この頃から自分の好みも少しづつ定着してきた感があり、私で言えば、素材は真鍮や素銅地の物が好みである事に気が付いた。
鉄鐔なら古刀匠や古甲冑師などの鐔が主に好みであるが、同時に現代の成木鐔なども成木氏の鐔にかける想いなどを本を通して知る事が出来、作者の事含めて1ファンとなった。

成木一成氏の弓矢八幡図の信家写


その頃になると目貫など別の刀装具にも興味が出始めた。
これは刀屋さんから後藤家を知る事が刀装具を知るには良いよ、と教えて頂いたからかもしれない。
そこで後藤家の目貫を実際に買ったり後藤家について書かれた本を読んでいる内に、ぱっと見は龍や獅子と言った同じ画題をテーマに製作しているにも関わらず、細かな鏨の入れ方や作り方に差がある事に気が付き出し、その段階になると、今まで集めた鐔を見返してルーペでより細部を見て象嵌手法など造り込みに対して今まで気づかなかった部分や共通点などにも気が付くようにもなってきて「おぉ…」と楽しめる要素が増え更に楽しくなったように思う。
そして別の画題の刀装具にも興味が出始め…という感じでエンドレスな状況が今である。

今楽しめるようになったのも…

という事で刀にしても刀装具にしても、数年前よりも今の方が同じ作を見ても各段に楽しめるようになったと思うわけであるが、そもそもそのように楽しめるようになったのは、自分が勉強したからなどではなくそのような勉強出来る場を用意頂けたことにあり、刀屋さんや鑑賞会、コレクターの方など、良い物を見せてくれる方がいたからこそであるように思う。
刀は1振だけ見るよりも、複数の刀を見る事で違いにも気が付けるようになり、その1振がより楽しめるようになる。
誰にも関わらず自分1人自分の感性でネットのみ使い蒐集するのも楽しいかもしれないが、その道に早くからいる方から直接教えて頂いたり、確かな物を見せて頂くというのは自分の感性を高める事は勿論、鑑賞を今まで以上に楽しむ上でとても大事なのではないかと感じた次第。

そして今日はちょうど東京都支部の鑑賞会。
毎回名品を並べて頂けるのでとても楽しい会です。

そういえば昨日から健康維持の為にジムに通い出したものの、早速腕がパンパンで筋肉痛が酷い。
刀を持つといつも以上に腕がプルプルしそうな。
万が一落とすと大変なので状況見て持つのが辛かったら刀装具に行こうと思います。


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それでは皆様良き御刀ライフを~!

↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。

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