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刀は跨いではいけない

刀を跨ぐことは無礼とされています。

・刀を跨いではいけない理由

刀を跨いではいけない理由として、刀剣ワールドさんのHPを見ると以下の様に記載されています。

武士は日本刀にとりわけ敬意を払っていました。他者の日本刀を跨ぐなどという無礼はもってのほか。切り捨てられても文句は言えません。
(引用元:「刀剣ワールド 武士と日本刀のニッチなルール」より)

熱田神宮さんのHPを見ると、刀の製作そのものが神聖的な行為である事が分かり、そこで使用される道具類を跨ぐことも固く禁じられる、とあります。

彼らが刀を作る鍛錬所には連縄が張り巡らされ、不浄なるものの立ち入りを拒み、そこが尋常でない神聖な場所であることを示しています。
また鍛錬所内には必ず神棚があり、そこでは鍛冶職の祖神や守護神と考えられている神々が祀られ、作業にあたり敬虔な祈りが捧げられます。
(中略)
仕事に取りかかる前に潔斎、即ち飲酒や肉食を一定期間禁じ、沐浴したり瀧に打たれるなどして心身を浄めるとの話しを聞くこと少なくありません。
鍛刀作業には火種が必要不可欠ですが、それは神前の灯明から戴いたり、火打すなわち切り火を用いたり、さらに和釘を打って発する熱からとるなど所謂「浄火」とされる清浄な火種を用いるもので、所謂火替・別火という信仰に基づくものでしょう。
鎚や金敷かなしき等の道具類を跨ぐことは固く禁じられ、火力アップに欠かせぬ風を吹き込む鞴ふいごという装置は殊に神聖視されており、ここにも注連縄を張りめぐらせています。
刀作りに火や風と共に重要なのが水であり、焼き入れには欠かせません。
焼入れの水を湛えた水槽を船といいますが、そこにも注連縄をめぐらせる場合もあり、神聖な水である事を示しています。
(引用元:「熱田神宮「剣の宝庫 草薙館」の開館に向けて」より)

つまり理由は主に2つで、1つが刀そのものが神聖的なものであるという考えがなされている点、もう1つが相手(所有者)への敬意を払う事が大事と考えられている点、という事でしょうか。

剣道でも、日本刀の代わりである竹刀に対して敬意を持つ事が大事とされ、全日本剣道連盟のHPを見ても以下のように書かれています。

竹刀を跨またいで渡るといった″不躾″な姿も散見されます。
(省略)
人の竹刀を跨ぐことは無礼千万なことですが、一方では跨がせないという心くばりもなく、床場に無造作に捨て置かれているのがよく目につきます。
(省略)
形かたちのみを教えて「心を教えていない」ということなのでしょうか。大事なものは跨がないというのは古来から日本の常識です。まして武士の魂とされていた刀を跨ぐなんてことは論外です。大事なものが足元にあれば避けて通るか、さもなくば、さりげなく脇に寄せて進む、というのが日常の身ごなしの中でできなければなりません。
(引用元:「全日本剣道連盟剣道みちしるべ」より引用)


こちらを見ると、5代将軍綱吉の時に大小帯刀が武士のみに限定され、大小帯刀=武士というイメージが定着。この特別感が格式となり、厳格な作法も定められた事で刀がますます神聖視されるに至った、とあります。
仮に世が世であれば、例えば私達が農民だとして、武士の刀を跨いだらどうなるか想像に容易い気もします。
私達が同じ武士階級だったとしても他者の刀を跨いだらどうなるかは想像に容易いです。

さて、この感覚は個人的には当たり前というか、言われなくても刀は跨いではいけないという認識があったわけでとりわけ驚く事でも何でもないのですが…。

・そういえばこんな事が

もうだいぶ時間が立ったので書きますが、かなり前に製作している刀展示ケースの取材を受けた時の事。
取材に来られた方は刀をまだ手に取った事の無い方でしたので、刀の鑑賞の仕方や見所、マナーなどを一通り説明してから展示ケースの説明をしました。刀がどのような物か分からない状態で展示ケースの説明ばかりしても伝わらないと思った為です。

という事でその時は床に布を敷いて刀を置き、刀を見る前と後で一礼する事、鑑賞時は喋らない事、などを理由含め説明した上で鑑賞していました。
鑑賞が一通り終わって片付けをしている最中にその方が立ち上がり刀を跨ごうとしたので、申し訳ありませんが刀は跨がないでもらえますかと伝えると、「刀って色々面倒ですね。笑」と一言。

何といいますか…。
日本人の教養はここまで堕ちたのでしょうかね。

初心者だからしょうがないと言う人もいるかもしれませんが、仮に刀を跨ぐ事が良くない事だと知らなくても、刀を蹴飛すリスクがある行為はしない方が良い位の配慮はできないものでしょうか。
人の性格は行動に出るなぁと感じた出来事でした。
因みにその方とはもう付き合いはありません。


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↓この記事を書いてる人(刀箱師 中村圭佑)

「刀とくらす。」をコンセプトに刀を飾る展示ケースを製作販売してます。



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