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6.初めての採卵、そして主治医倒れる

12月に退職すると決めたと同時に、体外受精へとステップアップする事にしました。10月に体外受精の簡単な説明を受けた訳ですが、そこで初めて「うちでは体外受精はできますが、設備がないので受精卵の凍結保存ができません」と言われました。…え、マジですか?実は私たち夫婦、体外受精と言ったら当然凍結保存までがセットなんだと思い込んでいたのです。そっか、設備がなければ凍結保存できない場合もあるのね…。そりゃそうか。勉強不足に猛省。凍結保存可能な病院なのかは1番最初に確認しておくべきでしたね…。とはいえ、すでに1年半以上A病院で治療をしています。不妊治療に関して、1番私の身体の状況を把握しているのはA病院だけです。凍結保存する為に別の病院で体外受精を行うことも考えましたが、この時点では「とりあえずA病院で1回体外受精をやってみよう」と決めました。

私達が受けたのはショート法という採卵方法でした。月経初日からスプレキュアという点鼻薬を1日3回使用しつつ、HMG注射を連日注射して卵胞を育てます。スプレキュアを点鼻する時間は絶対にずれないように、忘れないように、きちんと冷蔵保管するようにと厳しく説明されました。まだ会社を辞める前だったので、会社に持っていって冷蔵庫に入れ、更衣室で時間に合わせてこっそりと点鼻していました。仕事によっては、時間に合わせて点鼻ってやりにくいですよね。不妊治療に使われる薬は時間厳守だったり、注射だったり膣剤だったり、かぶれやすいテープだったりと使いにくいものが多いような気がします。もう少し使いやすい薬が開発されないかなぁと思いました。

卵胞がちょうど良い大きさに育ったらいよいよ採卵です。採卵して30分位休んだら自力でも帰れるということでしたが、念の為に、旦那さんには会社を休んで送り迎えしてもらいました。私は卵管造影の時もそうでしたが、採卵にもびびりまくっていました。膣内から卵巣に向かって針を刺すわけですから、想像するだけで痛そうだし怖かったのです。

朝一で病院へ行き、人工授精の時と同じように診察台に乗りました。いつもより念入りな消毒の後、局所麻酔をしたら採卵開始です。カチャカチャと器具を動かす音と「1個目いきますねー」という先生の声が静かな部屋に響きます。3回針を刺しても全く痛みはありませんでしたが、最後の4回目の時だけ、ちょうど麻酔が効いていない部分だったのか、チクッとしてお尻が浮きかけました。危ない危ない。

15分程で無事に採卵が終わり、後は担当医にお任せです。確認すると、4回中2個採卵できました。卵胞の中に卵子が入っていて、まずはひと安心。ただ、当日の朝に採取した精子の運動率が悪く、急遽、顕微授精に切り替えてもらうことになりました。それから30分ほどベッドで休んで、その日は帰宅できました。出血もほぼ無く、軽い生理痛のような痛みはあったものの、想像していたより体へのダメージが少なくてよかったです。

そして数日後、病院から受精卵の様子を電話で報告されました。今回は2個採卵できたものの、残念ながら2個とも4分割したところで成長は止まってしまったとのことでした。今回の体外受精は、受精卵を子宮に戻すことなくここでストップとなりました。凍結保存どころか、受精卵にすらならなかった。この結果に正直ショックでしたし、子供を授かるという事がどれほどの奇跡の連続であるかを実感しました。本当に難しいです。

詳しい説明の為に数日後に病院へ行くと、担当医の姿がありませんでした。2年間通院していて、一度も休診しているところを見たことがなかったので不思議に思い、看護師さんに「先生がお休みなんて珍しいですね」と言うと「実は先生、先日倒れて入院してしまったんですよ」と小声で教えてくれました。

A病院の婦人科には2人の医師がいるのですが、不妊治療をメインで行なっている医師は担当医1人だけでした。しかもこの担当医、土日でも人工授精や体外受精を行っていて「患者の都合に合わせてくれるのは助かるけど、この先生いつ休んでいるの?ちゃんと家に帰って寝ているのかな?」と患者側が心配してしまうくらい、毎日毎日いつでも病院にいるような人でした。なので、倒れたと聞いて心配すると同時に「やっぱりそうなってしまったか」とも思いました。患者の私が言うのもなんですが、A病院では1人の医師に負担をかけ過ぎていました。あのやり方じゃ、どんな医師だって遅かれ早かれ倒れます。

担当医の代わりの先生から、今回の受精卵の簡単な説明を受け、それから今後の治療についてのお話がありました。前述の通り、体外受精は担当医が1人で行っていて、代理の先生では人工授精までしかできないことを告げられました。今後、体外受精を希望する場合は別の病院へ転院するしかありません。2年通ってもなかなか妊娠できない事もあり、少し前からセカンドオピニオンを考えていた私達はすぐに転院を決めました。

ちなみに担当医ですが、今現在は回復されたようで現場復帰なさってるようです。よかったよかった。A病院では結局妊娠には至りませんでしたが、先生には大変お世話になりました。あまり無理していないといいなぁと思います。


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