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【詩】枯れ色

陽がかたむき、風が涼んで
木の翳が、長く手をのばしはじめた
さえずる鳥の、声音が変わった
川面を、枯れ色がおりてくる
土手も野原も、黄金にかがやき
森も茂みも、赤茶けて、くすんでゆく
枝にさがる、センダンの実が
じっと、乾きを待っている

風は、冷たく追いたてていく
ためらう夏日の、残り香を
汗ばむ実りを、見届けながら
日暮れの背中を、急き立てている

もの云う者も、云わぬ物も
枯れて衰え、みな、去っていく
明日の叶おう約束はない
逃げてゆく、火照りとの再会を
なぜ、信じているのだろう
冷めた契りを疑うもなく

©2023  Hiroshi Kasumi

お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。