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【詩】夜明け

一瞬の出来事であった
黄金色の光のひろがりが
たまらぬ眩しさを放ち
空のすべてを覆いつくした
なにもかも、かがやきわたり
空気は赤く染まっている
地平のかなたから
明々と燃える太陽が
音もなく、のぼろうとする
その放射は、
瞳を刺し、頭を貫いてゆく
 
強烈な光のまぶしさよ
 眠気を祓いたまえ
  邪気を祓いたまえ
 
真一文字の光の先に
すべて、かがやきわたり
金と銀の無数の反射が
寝覚めの瞳を見開かせる
樹々は黒々と繁茂を揺らして
はじまりの合図を告げる
押し寄せてくる
やるせない熱を浴びて
頭蓋のよどみが沸騰する
飴色の風が吹いていく
飛びたつ鳥のはばたきを見て
白みはじめた思案の潮が
波立ち、渦を巻く
 
雲を散らすほとばしりよ
 精気を放ちたまえ
  霊気を放ちたまえ
 
わたしは、
その瞬間の
目撃者であった


©2022  Hiroshi Kasumi



お読みいただき有難うございます。 よい詩が書けるよう、日々精進してまいります。