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創作のまねごと

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この世界のどこかにあったかもしれないお話。
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2019年8月の記事一覧

景色のすき間

「景色なんだよ、もはや」 催促につぐ催促により、2年越しに貸した本を返しに来た友人は言った。 「溶け込むとかそういうレベルじゃなく、もう景色、壁なわけ。ふつうに生活してて気に留めるためにあるんじゃないじゃん、本って。本当に必要なときだけ見えるようになってる。そう思わないか?」 淡々と語る口調を思い出しながら、満杯になった本棚のすき間に、返ってきた本を寝かせてねじこむ。 「貸した側がこれだもんな。そりゃそうだよな」 当然返ってくるもんだと思っていた