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創作のまねごと

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この世界のどこかにあったかもしれないお話。
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景色のすき間

「景色なんだよ、もはや」 催促につぐ催促により、2年越しに貸した本を返しに来た友人は言った。 「溶け込むとかそういうレベルじゃなく、もう景色、壁なわけ。ふつうに生活してて気に留めるためにあるんじゃないじゃん、本って。本当に必要なときだけ見えるようになってる。そう思わないか?」 淡々と語る口調を思い出しながら、満杯になった本棚のすき間に、返ってきた本を寝かせてねじこむ。 「貸した側がこれだもんな。そりゃそうだよな」 当然返ってくるもんだと思っていた

雨の日の小説

本屋に行き「好きなだけ居て、買っていいよ」と言われ立ち歩いたり窓際に腰かけてさわりを読んだりして半日を過ごし、次来たときの楽しみにと厳選した5冊だけを買って帰り机に並べて眺めて1日置く。 翌日窓の外を見て「今日は雨かぁ」と雨の日に合う1冊を選びお気に入りの椅子でクッションを抱き大事にプロローグに入り込む。 第1章に入りかけたところで「飲みもの」と呟きしおりはどこに置いたっけなとあたりを見回す。「雨の日は温かいカフェオレに限るよな」なんて知った風な口を聞き、カップを温めるのも