イメージの百人一首96「花さそふ―」

※このノートでは、百人一首のご紹介をしています。詳細な訳や、古語の解説、詠み手の経歴などは他書に譲り、各和歌のざっくりとしたイメージをお伝えしたいと思っています。イメージを伝える際、あたかもその歌を詠んだ歌人になったかのような気持ちで理解できるように、二人称を採用しています。どうぞ、お楽しみください。

【第96首】
 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
《はなさそう あらしのにわの ゆきならで ふりゆくものは わがみなりけり》

 あなたは晩春の庭を眺めています。庭には桜の木が植えられていて、少し前までは、あでやかな満開の様子を見ることができていました。しかし、今は、強い風に枝先があおられるようになって、次から次へと花びらが地面へと舞い落ちています。まるで雪のように降るその花の様を見ていると、いずれ自分自身も年老いて、この花びらのように散ってしまうのではないかと思わずにはいられません。いや、ひとたび嵐に遭えば、散るのはいずれのことではないのだと、あなたは人生のはかなさを思い、ひとり感慨にふけるのでした。

 入道前太政大臣《にゅうどうさきのだいじょうだいじん》

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